第16話【冒険者、戦場へ/ステラside】
もやが蔓延していたギルド内に、希望の光が差し込んだ。
作戦作りに励んでいた冒険者たちが、一斉にリリーさんに視線を集める。
「作戦が決まったのか!? リリーちゃんよぉ!」
「まだここに来てちょっとしか経ってないわよ!?」
「あはは、なんか出来ちゃいました……。聞いてください……!」
「なんか」で出来るほど、状況は甘くない。
しかし、リリーさんはそれをやってのけた。今は、リリーさんに頼るしかない。皆がそう思い、リリーさんの言葉に耳を傾ける。
リリーさんは「まず、五大神についての情報を共有させてください」と前置きをし、その鮮やかな作戦を話し始めた。
「五大神とは、破壊神ディアル、天候神ガルド、創造神フィリア、生誕神アルティーユ、豊穣神デディケイトの五人の総称で、この世界を守護する神々の
リリーさんは、端的に、要点を抑え説明していく。シンと静まり返ったギルド内には、リリーさんの説明する声と少しの感嘆の声だけが響く。
「まず部隊編成についてですが、今回は七部隊編成で行こうと思います。国民を守る『守護部隊』と、怪我人の治療を行う『治療部隊』。そして、五大神を相手にする『戦闘部隊』が五つです」
手際よく人数を振り分けていく。ここにいる冒険者は百。守護部隊が十人、治療部隊が十人、戦闘部隊が十六人ずつだ。
戦闘部隊のリーダーには、私、リリーさん、ローザさん、戦士の第一位であるビートさん、暗殺者第一位のダリルさんが選ばれた。
「私がリーダーなんて頼りないかもしれないですけど……」と、リリーさんは恥ずかしそうに笑った。
人数やリーダーに関しては文句のつけようもなかった。完璧な采配と言って良いのだろう。が……
「……なぁ、なんで守護部隊と治癒部隊にはリーダーが居ないんだ?」
守護部隊と治癒部隊にはリーダーが存在しない。そこを冒険者の一人が指摘した。そこは私も疑問に思っていた点で、リリーさんの意図がイマイチ読めなかった点だった。
リリーさんは読んでいた、という風に軽く頷き、
「それは、守護部隊と治癒部隊には、リーダーが必要ないと判断したからです。国民の守護と負傷兵の治癒は、指示を待っているだけだとカバーできない点があります。戦闘部隊は連携が必要なためリーダーを指名しましたが、守護と治癒の方々には、連携ではなく個人でやらなければならないことを行ってほしいのです」
と、説明した。質問主の彼はパチパチと二回瞬きをし、
「お、おお……?さ、さすが聖女様だな!! こんな部隊、俺には思いつかねぇよ!」
わかったようなわかってないような返事をした。
絶対、わかってない。
と、その横にいた魔道士らしき青年が呆れたようなため息をついて、ぼそりと一言。
「お前、全くわかってないだろ。……まぁ、お前がこれを理解していたら明日は大雨だがな」
「なんだと!!?」
また、わははははと笑い声が響いた。どことなく緊張した空気を紛らわそうとしている感が否めないが、まぁ、それでもいい。
全員で完全勝利できるなら、この緊張さえ問題外だ。
「ふふっ、では次に、作戦をお伝えしますね? 今回の作戦は──……」
まるで元からこうなることを理解しているかのような的確な作戦が、ギルド内の全員に伝えられた。
各部隊に分かれた冒険者たちは、各々の役割と部隊の特徴を把握し、装備を整えた。
「全部隊、準備万端です!」
「いつでもいいわよ!」
用意が完了し、ギルドに全部隊が整列する。
リリーさんに促され、私はぐっと右手を突き上げ戦場へ向かう決起の声をあげた。
「よし、じゃあ……行こう! 絶対に、全員で勝つよ!!」
刹那、一際大きな爆音が戦場から響いてきた。
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