第12話【大戦が始まる】
禍々しい魔砲に飲み込まれ、『レイクティアは焦土と化す……はずだった』
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が、偶然か必然か——……三人が魔砲に向けて放った技は見事な連帯を見せ、たった今この場で奇跡を起こした。
リアムが威力を削り、ステラが更に威力を削り、リリーが残りを防ぐ。そんな奇跡の連帯が、たった今人々の命を救ったのだ。
死者はゼロ。負傷者もゼロ。……誰一人、開戦の一撃で傷つくことは無かった。
その場に居合わせた人々は、夢を見ていたかのように呆然と、リリーが創った結界を見上げていた。
誰もが敵わないと諦めた魔砲は、たった三人の力で防がれた。本人たちも国民も一連の出来事に驚いていたが、それは破壊神も例外では無かった。
が、破壊神は「ほう」と感嘆の声を漏らし、ニヤリと不敵に笑った。
この一方的な神の戦は、もしかしたら──……
「リアムさんっ!」
ステラは先程、あの魔砲を半壊させるほどの
ステラは泣きそうになるのをこらえ、愛する人、リアムを探す。が、右を見ても左を見ても、リアムらしき姿は見当たらない。人混みの中から一人の人間を見つけるのは思ったより大変で、居るはずなのに、姿は見えないというもどかしさと寂しさを抱えながら、ステラはただひたすらにリアムを探した。
どこ、どこなの……?
ステラの胸中を焦燥が支配する。ふいに
「ステラ」
ステラの背後から、彼女が求めていた声が聞こえた。言うまでもない、リアムだ。
ステラがゆっくりと後ろを振り向くと、無機質なような、それでいて安堵したような表情のリアムがそこには居た。
リアムはステラに優しく問いかける。
「怪我は、無い?」
……ああ、リアムさんがいる。
ステラは、先程の不安感が水に溶けるように無くなるのを感じた。また泣きそうになるのを堪え、彼女は努めて明るく答える。
「うん……! あの結界があったから」
「良かった」
リアムは今度こそ安堵したように笑い、結界の方を振り向いた。
「「あの結界があるってことは……」」
二人はは同時にそう呟き、お互いに顔を見合わせた。クスリと笑って頷き合い、結界の創り手を探し始める。二人が人混みをかき分けるよりも早く、
「リアムさん! ステラさん!」
聞きなれた声が聞こえてきた。結界の創り手が、小走りで二人のもとに駆け寄ってくる。
「リリーさん!」
リリーとの再会に、ステラから思わず喜びの声が漏れた。
「ご無事でしたか……!」
軽く息を切らせたリリーが、にこりと二人にに笑いかけた。
リアムはこくりと頷いた。
「リリーさんの結界のおかげ。ありがとう」
淡々したお礼。リリーはその言葉に安堵したように笑い、
「そうでしたか……守れて良かった……」
と、独り言のように喜びを口にした。
三人は全員が無事だったことにひとまず安堵し、軽く情報交換を行った。
あの魔砲を防ぐことには成功したが、危機が去ったわけではない。三人は五大神の方に向き直り、リーダー格である破壊神を見た。
破壊神は、この奇跡に関心したように不敵に笑っている。そして、ゆっくりと、しかし威圧的にリアムに向けて言葉を発した。
「強きエルフよ。名をなんと言う?」
「……俺はリアム。リアム・ルーカスだ」
リアムは破壊神の威圧をもろともせず、毅然と答えた。
破壊神はそれに再度関心し、更に続けた。
「ではリアム、貴様に問おう。……こちら側に来ないか?」
「断る」
即答。破壊神は、その回答にまた不敵に笑った。
元より、答える意味など無い質問だった。リアムがどちらに転ぼうと、この戦いは止められないのだから。
リリーが知っている情報によると、五大神は大きな戦のときにしか下界に降りてきたことが無いらしく、目標を達成するまで戻らないと言われているらしい。
……つまり、リア厶への問いかけはほんの出来心ということになる。
リアムは破壊神ディアルを見つめ、はっきりと言った。
「お前を倒して、この国を守る」
「……そうか。その虚勢、どこまで続くか見ものだな」
ディアルは嗜虐的に言い放ち、事前に仕掛けてあった魔法陣を起動させた。国のあちこちで巨大な爆発が起きる。
「うわああああああああああああああ!!!!?」
「い、いやあああああああああああああ!!!!!?」
刹那、響き渡る悲鳴。仕掛けてあった魔法陣は百。住民たちは突然のことに驚き、逃げ惑い、混乱した。
リアムが二人の方を振り向いた。
「リリーさん、この国の人々を全員避難させて! それからステラ! 冒険者を全員ここに呼んで!」
「は、はい!」
「了解!」
素早く指示を飛ばし、リアムは破壊神の方に視線を向けた。
「……お前の相手は俺だ。この国は滅ばない」
「ふ、ふふ、はははははっ!!……後悔するがいい……己の愚かさを!」
リリーは
大戦が始まった。
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