第7話【神々の会合】
それは、穏やかな日々の中、秘密裏に開かれた——。
「いつの時代も、人間というのは過ちを繰り返す。食を求めて争い、領土を求めて争い、ついには私欲で争った。我等は僅かな光を信じてそんな人間を守り、守護してきた。何千年もの間、ずっと。しかし、もう……。人間の歴史を閉ざすべきではなかろうか?」
唸るような低い声で、男が言った。
円卓をぐるりと囲み、男女五人が座っている。天候神、創造神、破壊神、生誕神、豊穣神……。この世界を守護する神の頂点、五大神だ。けして交わることは無いとされていた五人だったが、今日、一堂に会し話し合いを行うことにしたのだという。
神界の空に浮かぶ「アルカディア神殿」は、その五大神の重たい沈黙に支配されていた。発言者である破壊神が、深いため息をついた。
永遠にも思える時間の間、人々を護り続け、世界を支える主軸となった神。自分たちが作り出した世界に住む人間の処遇を決めるのは、五大神とて、容易では無かった。全員が等しく無言で俯き、言葉を発さず黙り込んでいる。
「……人々は今、他種族とも手を取り合って共生する歴史を紡いでいますわ」
創造神が、沈黙を破った。顔を上げ、ふわりと笑いながら言った。
「
創造神は、破壊神の目をまっすぐ見て上品に微笑んだ。創造神は、歴史を閉ざすことに反対らしい。その瞳には、僅かな揺らぎがあった。
「……僕は歴史を閉ざすに賛成かな! もう、見ていられないし」
「俺もだ」
続いて豊穣神、天候神が歴史を閉ざすことに賛成した。
神界では、全員の意見を聴いてから結論を出すというルールがある。つまり、百人のうち九十人が賛成したとしても、残り十人の意見も聴かなければならないということだ。
皆の視線が、生誕神に注がれた。意見を述べていないのは、生誕神だけだ。
「私は——……」
生誕神は、躊躇うように視線を下に向けた。が、すぐに顔を上げ
「白黒つけることは出来ません。別の道を探したい」
と、はっきり自分の意見を述べた。
「別の道……」
「なるほどなぁ……」
「あははっ! いーんじゃない?」
「ああ。じゃあ別の道とやらを探そうじゃないか」
「……皆さん……ありがとうございます……!」
四人の神々は、生誕神の意見を尊重し穏やかに微笑んだ。
けして交わることは無いとされていた五大神は、人々の、否、世界の命運をかけた会議を始めた。破滅か、存続か、それとも——……。
一時間の会議の後、破壊神の声がアルカディア神殿に響き渡った。
「よし、決行は三日後。日の出と共に開戦だ!!!」
これは、後に聖愛大戦と呼ばれる、人々の変化のきっかけだ。
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