第5話【金色効果】


「ええっと……。能力を選べばいいのかな……?」


 突然の出来事に驚きつつも、状況を冷静に把握する。私の目の前に表示されている画面は、少しでも目を離せば消えてしまいそうなほど儚い光を発していた。画面に触れると、フォン、というタッチ音と共に能力の詳細な説明が表示された。任意の能力とは、恐らく装備につける特殊効果のことだろう。そう推測し、私は説明を読み始めた。


『統率』

術者がこれを発動したとき、半径五十リーテル以内にいる敵味方全員を一箇所に集わせる。上達すると効果領域を指定できるようになる。


(敵も味方もって……。状況によるなぁ……)

苦笑しつつ次の説明に目を走らせる。


『高速冷却』

魔法や技が起動するまでの時間が一秒短縮される。それに伴い身体能力や思考速度も上昇する。


(これは便利そうだけど、技術が速度に着いて行けるかが問題か……)


『状態反射』

状態異常にする技を任意の相手に反射する。また、自分が受けている加護を味方に分け与えることが出来る。上達することでより細かく設定できるようになる。


(つまり、思考との併用が課題と……)


『代償』

自分のを代償にすることで、大きな力を得る。代償が大きければ大きいほど、得る力も強大になる。レベルが上がることでより多様な効果を得ることができ、代償にするものも選べるようになる。


(『代償』か……)


どの能力も一長一短といった感じだった。


 『代償』は銀色特殊効果で、その他は金色特殊効果。今後何が起きるかは予測できないが、この能力は自分の適性で見極める必要がある。私の独自性パーソナリティは調べて貰ったが、「未知」という結果だった。何にも干渉されない今、選ぶなら……


「よし、『代償』にしよう……!」


 ぐっと胸の前で手を握り、私は『代償』を選ぶことにした。


『代償』は唯一の銀色効果であり、かなり扱いづらい能力なのだと思う。しかし私には『代償』が合っている、そう感じたのだ。聖女としても、冒険者としても強くなるためには、やはり——……


(『代償』ガ必要ナノカ?)「『代償』が、最善……!」


 私は、能力説明の下にある決定ボタンを押し、その効果を身に纏うことにした。画面が虚空に溶けていくのと同時に、純白の光が私を包んでいった。光は私と交わり、一つになっていく。『代償』が完全に私の能力となる少し前、『死ヌナヨ』と聞こえたのは、きっと気のせいだろう。

 ふいに、目の前に数字が現れた。34万。それが白い光を発し、34万1000という数字に変化した。

 今しがた変化したこの数字は戦力またはバトルパワーと呼ばれていて、自分の強さを表す値だ。私はこの国で三十番目くらいの強さで、一位リアムさんとの差は約二倍。農民の三歳児の戦力は200、十二歳児だと一万と言われているからそれと比べれば充分強いのだろうけど、まだまだだなぁと言った感じだ。が、それと同時に微妙な変化により強くなっているということも感じているのだった。


 その微妙な変化があの大戦で役に立つことを、私はまだ知らない。

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