第7話 「岩戸」
ミミズクの頭を持つ人外の者が僕の前に立ちふさがっていた。そいつは僕に向かって恐ろしい邪気を含む強烈な
「レイン……」
すぐ隣にいた金髪の少女がおびえながら僕の服の袖を掴む。僕は彼女を安心させるように頭を撫でた。
「大丈夫だよ きっと守るから……」
しかしその次の瞬間、少女の腹部には大きな穴が空いた。横を見ると、ミミズクの体から伸びた巨大な爪のような突起が少女のお腹を貫通していた。
空いた穴から真っ赤な血が滴っていた。少女は僕の事を、虚ろな目で見つめている。
「ァ…………………………!!!」
声にならない叫び。
そのミミズクはニタリと ワラッテ イタ……。
~~~~
「……大丈夫?」
目を開けると、そこには僕の顔を覗き込む女の子の顔。きれいな澄んだ瞳をしている。僕はその女の子の膝の上で横を眠っていたようだ。
その顔が昨晩知り合ったばかりの少女の物だということを思い出すのに、少し時間が必要だった。
頭にはもやがかかった様で、記憶さえもはっきりとしない……
「…………」
周囲が巨大な岩山で囲まれている場所だ。目の前の一際大きな岩山が、まるで天から僕のことを見下ろしているようだった。僕はゆっくりと体を起こした。
「ねぇ レイン、本当に大丈夫?」
ミーシャは目の前で、僕の意識を確認するように手を上下に振る。
「……ここは、ソーサーズランド……?」
「多分…? あ、水飲む? 意識がはっきりするかもよ」
ぼんやりしたまま、手渡された水筒を受け取る。僕はそのまま黙って水を口に入れた。
「いきなり初めてのテレポートは、やっぱりきつかったかな。 あはは……」
ミーシャはバツの悪そうに苦笑いを浮かべた。
しかし、その時はまだレインの記憶は混乱状態にあり、彼女がの言う事はなんの事はほとんど頭に入っていなかった。
その直後、僕達の一番近くにある岩に突然亀裂が走ったかと思うと、そこがまるで門のように左右に開いた。そして開いた岩の割れ目から不格好で傷だらけの鉄の鎧を身に着けた二人の人間が現れた。
それはソーサーズランドの門番である、極端に縦に長い身体を持つ兄イカ・フライと極端に横に長い身体のアジ・フライの凸凹兄弟だった。
彼らは外見こそ真逆のまるで似つかない二人だったが、兄弟ならではの阿吽の呼吸で協力して街を外敵から守っていたのだ。
「岩の中から人が……?! ねえ、レイン。この人達は?」
しかし返事は返ってこない。
「…………」
次の瞬間、まだ体力を回復しきれていなかったレインは気を失って顔から地面に倒れこんでしまった。丁度岩があるところに倒れたので顔面を打ち付け鼻から血がしたたり出た。
「れっ、レイン!」
(あ、だめだ 完全に気を失っちゃてる……)
そのとき、二人の門番の内の一人のほっそりとした兄イカ・フライがミーシャの方に近づいて来た。
「我らはこのソーサーズランドを守護するものだ。街の外に強い
(
ミーシャは素直に知っていることを目の前の鎧の人物に伝えようとしたが、その前にもう一人の鎧がそれを遮った。
「兄者! そ、その女の足元を見てくれちょッ」
「ぬ?! これは……」
そこにいたのはさっき気絶して倒れたままのレインだった。問題なのはレインの鼻血がなかなか止まらずに、頭の周りに小さな水たまりのようなものができるくらい溜まっていたことだ。
「こ奴は……我が街の
「いや、兄者。レインの奴は気を失ってるが生きてはいるようです。しかし、もしかしたらこの女が何かしたのかもしれねえですちょッ」
「うむ……」
弟のアジ・フライにそう言われたイカ・フライは、細い槍を取り出し私の方にそれを向けた。
「問おう。我らが仲間であるレインがこうなったのはお主のせいか」
「ええ!? いやっ違…………くもないかも」
「何?」
レインが気絶してしまっているのはミーシャが強引にレインを連れテレポートをしてしまった事が原因かもしれないと彼女は思ったのだ。
しかし槍を向けられてる状態で、私のせいだなどと言えば、どうなるかは目に見えていた。
「……けど、私はレインを傷つけるつもりなんてなかったの 本当だよ?」
しかし彼女は、誤魔化すことはしなかった。目の前の門番の目を見て無実を訴えた。
「うむ、そうか ならば街の中でゆっくり話を聞こう。アジ、レインを頼むぞ」
「兄者。それならマインさんのところに連れて行くのが一番手っ取り早いですぜえ」
「うむ。そうだな」
ガチャリ。
ふえ?……
腕に思いを手錠をつけられた私は二人の後に引かれて大岩の扉をくくり、岩の中にあるソーサーズランドの街へと入っていった。
こ、こんなはずじゃなかったのに――
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