第7話 アデールとブリタ。

2の続きになります。本編と被る部分は割愛しております。


ーー


フォーレストを出てデルタホテルに戻ると同時にフローレンス退院の連絡が入った。


「アーレイ様戻って来られたのですね、そちらに向かいます」


連絡が入りロビーに向かうとSPに囲まれソファーに背筋を伸ばし座っているフローレンスを見つける。彼女はゆっくり立ち上がりニッコリ笑いながらアーレイに近づくと、そのまま胸に飛び込んでくるそして優しく抱きしめた。SPを待たせ2人だけでエレベータに乗り込むと扉が閉まりクンっと動き出した途端に、何も言わずフローレンスとアーレイは強く抱きしめ合い激しくキスをする。ポーンっと途中のフロアにエレベーターが止まり扉が開くが、2人は気にせず抱き合ったままだ。


母親「うわぁ!」


乗り込もうと思った客が気にせずキスを続ける2人を見てかたまり、躊躇すると扉が閉まるまで呆然と見ていた。


「ママ、あの人たち何やってたの?」


「寒かったんじゃないのかな(汗・・」


子供に言い訳を考える母親の頭の中はフル回転だ。


「さぁ、みんな待ってるよ」


そして部屋に入るとフィー自ら出迎え挨拶を始めるとお互いの関係性がわかっているのか、フローレンスは第二婦人としての立場を自ら語り、それに応えるように謝罪の言葉を述べていた。


「ごめんなさいフローレンス、私がクーンの女王選ばれ本妻になってしまったの本来なら貴女よ」


「・・・フィリーサ様お心遣い感謝します」


いきなり謝罪の言葉を聞き、フローレンスはフィーの事を良き仲間として受け入れた・・。


「フィーと呼んでいいよ、一緒に盛り上げよう」


「はい、フィー様はアーレイ様が選んだお方なので不満はありません。まして6精霊の加護をお持ちですから尚更です、私はアーレイ様と共に過ごせればそれだけで構いません」


「本当?ありがとうよろしくねフローレンス、貴女となら上手くやっていけそうね」


「はい、此方こそよろしくお願いします」


「ジョリアーナと申します、それにしても綺麗な立ち姿ですね」


「いえ、嗜みは王族の基本ですので」


「ありゃ~、わたし完全に周回遅れだわ・・・」


王位を貰ったタイラーは王族の嗜みも知らない完全庶民だ。3人の立ち姿や身振りを間近で見て危機感を覚えたのだった・・。


「ねえアーレイ、クーンにはいつ行くの?」


「ん?ポコの報告を待って行こうと思っている」


「そっか、それなら少しデルタで遊んで行きましょ。それと、アーレイの部屋は個別にしてね」


「分かっているよ、今は休憩のために広い部屋を取っただけだ。宿泊するなら個別にする」


「うん、ありがとアーレイ」


アーレイ達は宝石店に向かい、タイラーはサフロンの所に報告のために向かった・・。


「サフロンおばさま只今戻りました。少しお話があります今まで育てていただき有難うございました」


「なんだいタイラー、どうしたの畏って」


「正式にフォーレストの王女になり、そしてアーレイ様の側室になりました」


「そうかい、アーレイから聞いたよそれでカーリンに会ったのかい?」


「はい会いました。そしてデルタ魔法部隊に配属予定です」


「は?、何それ」


「貧しい様子だったので補佐役としてスカウトしました。エッヘン!」


ドヤ顔のタイラーを見て頭を抱えているサフロン。母親を魔法部隊の部下として勧誘、アーレイとは当分通い側室になると言い放ち流石にあきれた様子だ。


「あの男も何考えているんだよ」


「アーレイ様は優しいです、お母さんと一緒に暮らせるように脅していました(笑」


「はあ、あの男はなんでこう人の感情を上手く読むのかね・・・」


「それでタイラーあんたはアーレイの側室で幸せなの?」


「もちろんですわ、理想の旦那様ですもの。エヘ!」


「はいはい」


ーー


この後の話の流れは宝石店で買い物を済ませポコとミラーが合流、最初の目的地クーンに向かいますが設定が変わってます。


アーリーは出現せず、アデールは偽装はしていますが、それなりの年齢を重ねたエルフの設定なのでアーレイと婚姻を結ばず求めることはありません。それとタイラーは修行に行く時に挨拶した程度しか認識がありません。フィリーサの事は報告書で知っている体です


本編ではアデールを残しアーリー達だけ冥府に旅立ちますが、閉話で変わっています。


ーー


クーンに向かったアーレイ一向は謁見室ではなく女王の私室に通され、挨拶を済ませるとアデールはとても嬉しそうにフィーをもっと傍に来るように招く。


「あなたね新しい精霊女王は、まあなんて美人さんなのもっと近くで見せてよ、さあここに座りなさいお茶を飲みながらお話しましょう。アーレイ様、凄い人見つけましたね」


「まあね、彼女は小さい時にすでに黒の精霊に試され決まってたんだよ」


「まあそうなのフィリーサ、教えてちょうだい」


アデールは黒のうさぎのに出会った話をするフィリーサの銀髪と緑眼をとても懐かしそうに眺めていた。


「その銀髪、緑眼、クレア様の生まれ変わりと言っても過言じゃなくてよ」


「ええ、結局こうなる運命だったとしか言えません」


「そうね、でもこれで私もようやく安らぎを得る事が出来るわ」


「そんな、寂しい事言わないでください。私はまだ決心が出来ていないのですから」


「そうなの?あなた、結婚して心も体もアーレイ様を受け入れているじゃない」


「それはそうですが・・・」


「心配しなくても大丈夫よ、自信を持ちなさい女王は弱気じゃ勤まらないわ、貴方は自分の本当の力を怖がって使わないだけよ」


アデールに女王として心構えの一つを教えると理解したフィーは凛とした表情に変わった。


ーー


この後ブリタに会いに行き、ミラーは殆ど修行することなく最強テイマーとして認められます。費やした日数以外は本編とほぼ同じなので割愛します。


ーー


<アデールとブリタのお別れの日>


早朝、アデールとブリタは小高い丘の上に立つ戦没者の碑の前に立っていた。周りの濃い霧が幻想的な雰囲気を出していた。


アデール「みんな待ってるよね」


ブリタ「アデールもう思い残すことはないの」


「ブリタ、私は十分生きた思い残す事はないわ、それにしてもフィリーサとアーレイ達は飽きないかしら」


「神にでもなるのかのー、ワシらみたいに歳をとらんからな。フィリーサは17歳。ジョリアーナは16歳、タイラーは19歳のままじゃよ。フローレンスなんて23歳なのに冷凍保管のお陰で17歳じゃよ」


「うふふ、いつまで生き続けるのかな」


「さあ、わからん。アデールそろそろお迎えがくる頃じゃよ」


「そうね、そろそろね」


そして2人は戦没者記念館にゆっくりとした足取りで向かう。笑みがこぼれ冥府に旅立つ事を喜んでる様子だ、中に入ると既に皆が集まり悲しい表情を浮かべていた。


アデール「みんな朝早くから悪いね」


フィー「いえ、旅立ちの日ですので」


「そうか後は頼んだぞ、フィリーサ、アーレイ」


「はい、もちろんです」


「最後にこうやって皆とお茶をしながら逝けるのか幸せじゃの我らは、どれミラーこっちにおいで」


「はい」


「お前に教えることはもう無い、最後にこれを授ける」


ブリタはスッと額に手をあてるとミラーの額に、象形文字の様な模様が浮かび上がる。


「これはな、最上位者が認めた物に与える紋章じゃ。お前と同等かそれ以上に優れたテイマーが現れたら、この紋章を分け与えることができるのじゃ、これでババアの役目は全て終わった」


「フィリーサ、こちらに」


「はい、アデール様」


跪くフィーの頭の上を左から右に空を切る。金色の星が降りかかりそのまま身体に取り込まれた。


「フィリーサこれでお前の能力は全て解放された。人の生死、6精霊の力、魔力を貯めれば時空を超えて移動できる。だが余程のことが無い限り使うでない、私は生涯を閉じる今日まで一度も使わなかった」


「承知しました、胸に刻んで忘れることはありません」


「アーレイあなたは死の騎士、フィリーサの事を頼みました。ポコこちらに」


「はいナノ」


ポコの頭の上に手をかざすとパッと光りそれが吸い込まれていく。


「お前は獣人女王だ、フィリーサをサポートしなさい。4精霊の加護が与えられました」


「はいナノー、ありがとナノー、アデール様」


「ジョリアーナこちらに、お前には豊穣の力を与えます。それと水、火、風、土4精霊の加護です。国を土を育てるのですよ」


「はい、畏まりました。アデール様」


「タイラーあなたは王族系エルフよ、フォーレスト、エルフの長として彼らを育てなさい、あなたは6精霊の力の一部が使えるわ加護は4精霊よ使える力は相当な筈よ」


頭の上に手を翳すとフワッと6色の虹色が吸い込まれる。


「はい、有難うございます」


「フローレンス、貴方の5精霊の力全てを解放するわ。フィリーサを実務面でサポートしてあげて」


「わかりました、ありがとうございます」


ブリタ「さあ、これで全てじゃ」


アデール「さあ、参りましょう」


アーレイが光だしブラッドが現れると2人は跪く。


ブラッド「今までご苦労だった、そして心から礼を言う」


「はい、有り難き幸せ」


「よろしくお願いしますのじゃ」


「汝役目を終え冥府に旅立つ事を許そう、さあ逝くが良い!」


ブラッドが黄泉の国の入り口を開くと、2人はスッと立ち上がり全身がゆっくり光の粒子で出来た人型に変わった。アデールとブリタは見つめ合い手を繋ぎ悦びに満ちたとても柔らかい表情をしていた、そしてだんだん光が弱くなると最後にスゥーと線香花火が消える様に光り入り口に吸い込まれていく。


「無事に逝ったようだ、ありがとうアデール、ブリタ」


その日のクーンは悲しみに覆われていた。城の前に広場では2人の棺が祭壇に鎮座し周りには沢山の花が添えてある。実体は消滅したので亡骸は入っていない。国民葬のために棺を準備したのだ。昼夜問わず参列者が長い行列を作り人々が絶えない。そして3日目、ようやくまばらになってきた。次の日の朝、棺が運び出され戦没者の碑の近くまで運ばれると小高い丘の墓地に埋葬された。それを見届けたフィーとアーレイは一礼するとクーンを後にする。


「アーレイ終わったね」


「そうだね、これからが忙しいよ」


「そうね、行きましょう」


「ああ」

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