第6話 フローレンスとタイラー。2
アーレイはサフロンの所から戻り、フィーにタイラーの出征の秘密を包み隠さず全て教える。
「それでタイラーに教えるの?アーレイに任せるね」
「そのつもりだけど少し様子を見決めるわ、女同士の方が喋り易くない?」
「出会ったばかりよアーレイよろしく!ふん!」
「フィー、タイラーの事は悪かった、隠していたわけじゃないよ君が1番なのは変わらないよ」
「分かってる、アーレイ!私の気持ちの整理が少し出来ていないだけ」
アーナは昔から友人なので全く問題がなく、フローレンスは王女だから納得できた、だがタイラーを側室認定し突然湧き上がった話にフィーは少し戸惑っていた。そしてアーレイは考えある提案をする。
「なあ、タイラーをフォーレストの”王女”として迎えるってどう?レナルド王の娘だよ、この際だから一気に解決する」
「はい?あっ、そっか!それは良い考えね」
「フィー、意地悪になってよ」
「あっ!分かった悪巧みでしょ」
「まあね」
「フフ、いいわよ」
アーレイはタイラーの問題を一気に解決しようと考えたのであった・・・。
ーー
部隊の訓練が終わるのを見計らいカフェにタイラーを呼び出生の秘密を打ち明ける。
「タイラー重要な話がある、君はハーフエルフじゃない純粋なエルフだ」
「ええ、そうなのですか?巨乳でもエルフなんだ・・・」
「はっ?はい、そこ」
フォーレスト行く前、タイラーにサフロンから聞いた事を全て教えるアーレイだったが、反応が少し違っていた・・。
フィー「うん、彼女のその考えは天然ね!」
「魔法適性から考えると、君の生みの親は魔道士じゃないとおかしいのだよ」
「そうですね種類は違えど複数の魔法を使えるのは魔道士の因子がないと普通無理です、私の母親はカーリン・ランツですよね別に気にしません」
「知っていたの?」
「はい、孤児院時代に何度か寄付の為に訪れ、いつも私を見て悲しい顔をしていたので嫌いでした。今思えば何か言いたそうな表情でしたね」
「カーリンが母親、父はレナルド王、この2人は元恋人同士そして生まれたのがタイラー、産んだのは王に就任の後なんだよ」
「そうなのですね、ということはこれから王位を貰いに行くってことですか」
フィー「そうよ、あなたに王位を認めさせフォーレスト王国から出した側室ってことにするのよ」
「うふふ、アーレイ様は側室を増やしたく無いのですね」
「まっ、それは建前であなたの事を私に納得させる為でしょうね」
「それ、凄い言い様ですね」
「気を遣われているのが嬉しいだけよ」
「フィーはますます女王らしくなってきたなー」
「アーレイ何か言いまして?」
「いえ、褒めただけです」
「まあ、嬉しいわ」
「ふふふ」
「ははは」
そして翌日またフォーレストに向かうと、今度は謁見室では無く客間に案内されのんびりお茶を嗜んでいるが、タイラーはメイド服姿でアーレイの後ろに控えている。勿論エメリナはタイラーの横で鉄球が鎖で繋がれ、首には魔法阻害の首飾りを付け、超ミニスカメイド服姿で立たされていた。そして入室してきたウィン、ノエル、ノーラ、シャーリーン、レナルドがエメリナの姿を見て驚愕していた。
ウィン「す、すごい格好ですね」
レナルド「話は聞いたがこの扱いは些か・・」
驚愕はしていたが全員挨拶を終えアーレイが話を始めた。
アーレイ「さて、皆さんもお気づきでしょうが、エメリナは先日正式に私の奴隷となりました、もちろん異論はあると思いでしょうが決定事項なので王女としては扱わず、新しい名前はオイコラです」
レナルド「な、なんと、名前も変えたのか・・・・」
「はい、人として終わっていますので殺す価値すらありません。ですから奴隷にする事でエメリナの処分が決まりました。もうオイコラですがね」
エメリナは終始黙ってジッと無言で話を聞いているが何か言いたそうな表情だ。それは余計なことをしゃべるなと命令をアーレイが行使したからだ。勿論、話せばいきなり電撃が流れ痛みをこらえる為にしゃがめば下着が丸見えになるので我慢していた。
「分かった」
愕然とした表情でエメリナを見ているだけで話しかけようともせず、謝罪の言葉1つもを述べようとしない王女達を見かねたフィリーサが突然文句を言い放つ。
「貴方達!何をぼんやりしているのですか!エメリナがこの様な姿で奴隷落ちしたのは全員の連帯責任でもあるのですよ!」
「ワワワ、申し訳ございません、時期精霊女王様」
皆フィリーサの前に跪き、それぞれが謝罪の言葉を述べ始めた。
「エメリナが欲望に塗れ馬鹿になったのは、そのわれ関せず他人事の様に接していたからではありませんか、レナルド貴方は自分がポンコツだと理解していますの?」
「フィリーサ女王様、その言い様はあんまりだと多います」
「黙れノエル、誰が発言を許した!」
ブン!フィーの威圧に晒され更にグラビティ重力魔法を発動しカエルの様に床に張り付く。
「ギャ!うぐぐ、も、も、申し訳ございません」
「レナルド、なんですのこの有り様は?ところで、風の噂で聞きました貴方には隠し子がいるようね間違いないかしら?」
「・・・(汗」
無礼なノエルに対して目に余るほどの仕打ちを見て驚き、さらに誰も知らない筈の隠し子の事を言われレナルドは驚愕の表情のまま黙り込んでしまう。
「早く喋ってレナルド調べはついているわ、私の口から言わせるなら貴族堕ちしても貰おうかしら」
ウィン「わわわ」
2人のギリギリの攻防が続いていた、高いプライドが邪魔し押し黙ったまま睨むレナルドを見かねたフィーが、「あらあら可愛い娘さんが可哀想だわ」と言い放つと流石に観念したのかようやく認めた。
「はい、1人おります」
あなた!今まで黙っていたの?誰の子供よ!とウィンが叫び一気に鬼の形相に変わると娘達の表情が凍てつくが、全く気にしないフィーはレナルドに隠し子の居場所と王位について問いただす。
「貴方の子供ですよね、もう一度言います王位継承権はありますよね?」
「はい、あります」
「何故、与え無いのですか?」
「そ、それは・・・・」
「ウィン、どう思います?」
「はいお答えします。レナルドが隠していた事は腹が立ちますが、その隠し子はフィリーサ様と何の関係があるのでしょうか?」
「私にフォーレスト王族の不祥事を見過ごせと言うのですか?これが世間に知れたらどうなると思いますか?」
「王族の不祥事、恥ずかしい事かと」
「フォーレスト王国はエナジーボールを一手に引き受けている重要な国なのですよ。ねえ、私が悪人で隠し子の存在を知ったら間違いなく誘拐するわ、そして王を脅迫するのお金は持っていないけどエナジーボールは都合つくでしょ、裏社会で売れば大金が手に入るわ」
ウィン以下フォーレストの王族は危機意識が薄い、それもその筈、入国審査は厳しく入念に行い不審者が侵入する事は少なく、城は関係者以外近付けないので尚更だ。
「申し訳ございません、そのような事まで頭が働きませんでした」
「貴方達は欲が無く争いを好まないのは理解しています。ですが悪意に対してあまりにも無防備、争うことを避けるのは良い事ですが攻められる可能性を排除するのも必要だと思います」
「仰る通りでございます。
「さて話を戻しましょう、その隠し子に王位を与え保護するつもりはありませんの?」
フィーはレナルドにわざと高圧的に接し何度か脅しのように詰め寄ると渋々王位を与える事を了承、次に話題になったのが隠し子とその相手の母親のことだった。しかし当のタイラーは偽装した状態で目の前に立っていたが誰も気がついていない。彼女はこのやり取りをじっと澄ました表情のまま見ていた。
「ところでレナルド、その子の名前と居場所を教えてくれるかしら」
「貴方、相手は誰なのよ!」
2人に詰め寄られたじたじのレナルドは、ボソボソと呟くように話始める。
「子の名はタイラー・・・相手の母親はカーリンだ」
「あなた、相手はカーリンなの!!」
「ねぇ、ボソボソと喋っているけどカーリンに何か施したでしょ、呪術とか」
「ま、まさか、全て分かってこのようなやり取りをしたのでしょうか?」
フィーは母親のカーリンがタイラーに対し喋ることも何も出来ないことに疑問を感じていた。そこでレナルドから聞き出す為にわざと呪術を掛けていると鎌をかけたのだった。それに引っかかり全てを知っていると答えてしまった。。
「ふん、さっさと喋りなさい、もう隠しても無駄よ」
「フィリーサ様、申し訳ございません」
ずっと平伏したままのウィン以下王族達はひたすら謝るしか無かった。そしてカーリンに掛けた呪術の内容を聞き出すとやはり名前を呼べなく接触を禁じていた。そしてここでタイラーの出番となった。
「ねぇ、貴方の方がよっぽど王族らしいわね」
「ふふふ、そうですか?私はポンコツ父親の姿を見てげんなりしました、全然未練はありません、ですが王位は貰いましょう」
「はは、それが1番ねタイラー」
「はいフィリーサ様」
「フィリーサ様、発言をお許し下さい、今何と申されました?」
「レナルド聞いてなかったの?あなたの娘のタイラーとのやり取りを」
「タイラー、本当に私の娘のタイラーなのか、その格好はウサギ族だよな」
「さあ、私は親の顔を知りませんし死んでいる筈でしたが生きていたようですね。最後に顔を見たからもういいや」
「タイラー!」
「気安く呼ばないで!貴方は王としては一応認めますが、親としては絶対認めません」
「そんな・・・・・」
「はいこれ王位継承に関する書類です記入して渡して下さい、別に王位継承権は必要ありませんが、形だけ第四位を下さい」
タイラーにぶった斬られるレナルドは情けない顔になり膝をつき頭を抱えていた。途中、偽装を解除し本来の姿に戻るとノーラ達兄弟が自分と同じ顔立ちを見て親族だと確信したのか、立ち上がり彼女の元に集まり始めた。
「それで、王位を貰ってどうするのだ」
「まだ分からないのですか?決まっているでしょアーレイ様の側室になるのです。ノーラ、私は貴方の妹にあたります。今までのやりとりを見て考え方を変えるのでしたら、今後仲良くやっていけると思いますのよ全ては貴方達次第ね」
「タイラー、知らなかった事とはいえごめんなさい。私は貴方と良好な関係を築いて行きたいのです。今後ともよろしくお願いします」
深々とお辞儀をするノーラ達を見たフィーは確信を得たのか、柔らかい表情になりその様子を眺めていた。
「演技するのも結構疲れますね」
レナルド「え?、今なんと」
「レナルド陛下ごめんなさいねわざと意地悪したの、でもこうでもしないと事が進まないでしょ、今回一気に進めたかったの。ですがその下らないプライドは捨てて下さい国の存亡に関わりますこれは命令です」
「わ、分かりました。考え方を改めさせて頂きます」
「ノエル、ノーラ、シャーリーン、王族は民の事を一番に考え育て守りゆく者です、この事を肝に命じなさい」
「はい!フィリーサ様」
「それでは失礼しますわね、ウィン、別に貴方達のことが嫌いなわけじゃ無いのよ、旦那が酷いからここまでやったの勘違いしないでね」
「はい、フィリーサ様。ありがとうございます今日の事は一生忘れません」
カーリンの問題を覗き全て解決し、アーレイ達は城を後にした・・。
ーー
城を出て向かったその家は町外れの森の近くにポツンと建っていた。今にも壊れそうな古い家の住人はもちろんカーリンだ。
「タイラー、ここがカーリンの家だ心の準備はできているか?」
「古くてボロボロですね、母にはちゃんと報告したいと思います」
そして意を決して扉をノックするとカーリンだ出てきて一同を見るなり、部屋の中に案内される。
「お久しぶりクリスさん、アーレイさん」
カーリンの表情は苦しそうだタイラーの名を呼べないらしい、顔を見るが押し黙ったままだった。そしてアーレイに対し平伏し謝罪を述べる。
「アーレイさん誠にすみませんでした、私の魔法陣でご迷惑をおかけしました。」
「気にしないでください無事戻ってきましたから、それと謝罪は受け取りましたお立ちください」
「はい、誠に申し訳ありませんでした」
フィー「貴方の呪術を解除するわ」
フィーがパッと手を光らせ、カーリンの頭に乗せると、シュっと何か体から抜け出ていった・・。
「ありがとうございます、フィリーサ女王様、これで、これでタイラーと呼べます」
カーリンはニュースで知っていたのだろう、挨拶もせずに呪術を解除したフィーにお礼を述べた。
「タイラー・・・・大きくなったわね。けど、ごめんなさい・・・・私にそんな事を言う権利はないわね」
「お母さん」
「貴方は、まだそう呼んでくれるの・・・・」
「うん、お母さんが私を育てることが出来なかった理由を知ってるし、呪術で名前を呼べなかったのでしょ」
「ごめんなさい馬鹿な母親で・・あの人に何度も頼んだの、けどプライドが邪魔して結局何もしてくれなかったの」
「うんん、ポンコツ王より全然ましよ、結局あいつは何もしなかったのでしょ」
「デルタの王宮魔道士になって、それから一度もちゃんと会ってないわ」
「それも寂しいことね愛し合っていたのに」
「あの人のことはもうどうでも良いわ、けどね、貴方のことを忘れたことなんて1日も無いのよ」
「私は今まで両親を知らずに生きてきたの。今日、顔を見れたからそれだけでいいわもう満足よ」
「これからどうするの、タイラー」
「アーレイ様の側室になりまし」
「ええ!!」
クリス「カーリンさん、タイラーはフォーレスト王族として正式にアーレイの側室になりました。アーレイはクーン精霊王国の国王になります」
「凄いわね、流石星団の英雄と言われるだけあるわ、あっ、すみません挨拶が遅れしまいました」
「ふふ、私より我が子の方が大切でしょ、私がフィリーサです」
「初めましてタイラーの母親のカーリンと申しますフィリーサ女王様」
フィーの前に跪き挨拶するカーリン。
「タイラーは選ばれましたが、デルタ魔法部隊の隊長なので当分のあいだ通い側室とします」
「それは仕方ないわね、寿命が長いから好きにすれば良いと思います」
「お母さん、デルタで私と一緒に働きませんか?」
「はい?」
「デルタは魔法部隊を復活させました、私はそこの隊長で補佐役が必要なのです」
「ありがとうタイラー、けど今更あなたと一緒になんて虫が良すぎるわ」
アーレイ「カーリンさん、精霊女王から命令させましょうか?」
「・・・・・・」
「タイラーはあなたを憎んでいませんよ、少しは母親らしい事した方が良いと思いますけど」
「ううう、アーレイさん・・・ありがとう」
「今まで放置した罪悪感をお持ちでしたら、今からでも遅く無いのでタイラーに寄り添ってあげて下さい」
「わかりました、そうさせて頂きます」
「タイラー、これで良いかな?」
「はい!ありがとうございます、アーレイ様!!」
こうしてカーリンは当分の間、デルタで一緒に生活することが決まった。
終わり。
ーー
本編執筆中、アデールが若く美人の設定にした為、バランスが悪くなり、且つ精神体のアーリーの活動を細かく描くと、とんでもない文字数になりそうだったのでこの話はお蔵入りになっていました。
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