第4話、暴虐、時空を越えデルタリア共和国に行く。

<<あらすじ>>


アデール女王から謝礼で貰ったエナジーコアを搭載したアーレイ専用戦艦”暴虐”。そのシンプルなデザインと抜群の破壊力を持つ主砲。そして絶対的防衛力を兼ね備えた最強の戦艦は処女航海の日、突然コアが暴走、時空を越え約400年前に飛んでしまった・・・。


注、デルタリアの戦艦の強さはアーリー達の物語の設定とは違い弱い事になっています。


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<<デルタ恒星圏内>>


処女航海に出た暴虐は最初に長距離ジャンプを試そうとしていた・・。


Ai「ジャンプコアオンライン」

アーレイ「ジャンプ!」


アーレイの掛け声と共にジャンプすると、いきなりビー!ビー!と警告音が鳴り響き突然コアが暴走を始めた。


Ai「危険です!ジャンプコアオーバードライブ、許容範囲を超えています」

アーレイ「緊急停止!」

操舵手「だ、駄目です、そのままジャンプします!」


艦橋内にギューンと嫌な音が響くと次にギュワーンと目の前の空間がマーブル模様に歪み始めその異様な空間に吸い込まれていく暴虐。今日は処女航海の初日、長距離ジャンプのテスト中に突然コアが暴走を始め作戦モニターには星が円運動を描くようにグルグルと流れ続け艦橋内部も歪んで見え始める。


「各所、緊急報告!」

機関長「艦長!機関室自体が歪み、ジャンプコアが共振を起こしステルス装着の電源が勝手に入りました」


アーレイは各部署から上がってくる報告を冷静に聞いていた、だが静観していると1分もしないうちに歪みがなくなり、モニターにはジャンプ前と変わらない風景が流れていた。


機関長「アーレイ艦長、船体に異常はありません、ただいまエンジン関係点検中です」

レーダー手「現在地、デルタ恒星圏内位置変わらず」

副長「機関長より報告が上がりました。ジャンプコア、通常エンジン異常なし、ステルス装置のみオフライン」

レーダー手「艦長、中立地域の識別マーカーの反応がありません」


各方面からの報告が次々と上がって来る。ステルス装置以外はこれと言って異常がないようだ。アーレイは安堵をため息をつくと次の指示を出す。


「デルタに繋げ」

「駄目です、反応ありません」

「なんだと、この距離で通信が出来ないのか」


距離的には自分の家の庭に出るくらいの距離感覚だ、しかしモニターにはいつも表示される情報は全てオフラインと表示され一目見ただけで違和感を感じていた。


「アーレイ艦長、大昔の亜空間通信をキャッチしました、音声出します」


通信士は付近に流れている電波をキャッチして少しでも情報を得ようとしていた。そして感知した電波は大昔に使用していた亜空間通信だった。


<こちらデルタリア軍警備艇レッキー、ディスティア軍に告ぐデルタリア防衛ラインに侵入している即刻退去せよ、繰り返す・・・・>

キース「おい、デルタリアってまさか・・」


異常を感じたキースが戦闘区画から艦橋まで上がって来ていた。そしてその通信内容を聞くと信じられないような表情を浮かべていた。


「デルタ王国の前身のデルタリア共和国なのか」


無線を傍受し会話を聞く限りディスティア帝国がデルタリア共和国に侵攻中だ。キースが艦船名を調べ警備艇レッキーの詳細情報を見ると更に固まってしまう。暴虐は数百年前に飛ばされた事が判明したためだ。


キース「これってディスティアが攻めて来てデルタリア共和国が崩壊した時代じゃねーかよ、レッキーって船は350年程前に活躍していた船だぞ」

観測手「ジャンプ阻害ありません、本星まで飛べます」

アーレイ「まさか・・それなら助けに行かないと」


歴史書によれば侵略して来たディスティアを撃退したが共和国に多大な被害が及び崩壊。生き残ったデルタ国のアーネスト伯爵が残った国をまとめデルタ王国を建国したとなっている。史実を知るアーレイは惑星デルタリアに向け急ぎ舵を切った。


「艦長、まもなくデルタ領域に入ります」

「観測用ステルスシーカーを上げろ」


そして全速力で向かったアーレイ達が見たものは、惑星を背にしたデルタリアの戦艦に向け艦砲射撃をしている無数の船が見える、もちろん識別コードは発信されていない。キースが引き続き戦艦目録を調べ、それによれば初期のディスティア宇宙軍の船と判明した。


「どうするアーレイ、のんびり確認していたら戦艦が全て沈むぞ」


ディスティア軍は強力な対殲滅兵器を使ってデルタ国首都の攻撃準備をしていた。その兵器は1発で一つの街を消し飛ぶ威力だ。観測用シーカーから入ってくる探査データーを見ると既に何ヵ国の首都が攻撃され甚大な被害が出ていた。


「ああ、わかっている落とすか撹乱するか迷っている、何隻いる?」

「そうですね、艦隊自体は50隻程度、その中で攻撃体制に入っているのは1番大きい船で10万トンクラスが10隻程です、まもなく敵の射程圏内に入ります」

「敵艦に動きあり、こちらに転進5隻ほど向かってきます」


暴虐に気がついたのだろう艦隊の中から5隻ほどが近づいてくる。既に主砲が暴虐を捉えピーピーとロックオン警報が鳴り響いていた。


「アンノンよりコンタクト入ります」

<こちらはディスティア帝国軍だ、大人しく拿捕されろ>


それは完全に舐め切った通信内容だった。数百年前から現在まで全く変わってない。アーレイは振り切れたのか目を見開くと即座に指示を出す。


「よし沈めよう!砲手主砲に充填開始、こちらデルタ宇宙軍アーレイ、ディスティア軍の降伏を要求する」

「・・・・」


アーレイが返答をしたが相手は返答の代わりに主砲を発射してきた。だが大型砲弾らしくレーダーには数十発が高速で近づく様子が映し出されていた。


「敵船、撃って来ました大型の実弾です」

「ふん、パネル砲で落とせ、攻撃開始!」


そして即座にパネル砲が展開するとパパッと光り砲弾を無力化、次に暴虐の主砲を発射するとグンっと体に軽い反動と共に5本の線が敵船に向け伸びていく。


「敵艦に命中、行動不能を確認!」


暴虐の強力な主砲は艦首に命中するとそのまま艦尾へと抜け、敵艦はピーナッツの殻を割るように外殻が崩壊した。


「デルタリア軌道上にいるディスティア艦に告ぐ、早急に立ち去れよ応じ無い場合強制排除する」

「・・・」


返答を待つが相手は反応しない。再度通告を行うが失礼な返事が返ってくる。


「最後通告だ、降伏しない場合は沈めるぞ!」

「寝ぼけた事言ってんじゃねーよ、そっちこそ降伏しないと首都攻撃開始するぞ」

「敵艦が重なっているところを重点に砲撃開始、無力化するんだ。撃て!」


アーレイの攻撃命令で一瞬で9隻が行動不能になり、再度降伏勧告を促すが逆に転進を始め暴虐に向かってくる。


「最後通告、砲撃をやめよ殲滅戦に移行する」

「ふざけんな!」


この返答を聞いた瞬間にアーレイは殲滅戦を決断、問答無用にディスティア軍を撃破、暴虐に蹂躙され次々に鉄の塊に変わり果てていく。


「突撃開始!キース旗艦を行動不能にしろ」


旗艦1隻を残し全ての戦艦が沈黙。間髪入れずに艦橋に突撃すると機甲歩兵が旗艦に侵入を開始。そして1分もしないうちにキースから連絡が入る。


<アーレイ、艦橋の制圧完了だ>


数百年も後に開発された機甲歩兵相手に生身の人間が勝てるわけもなく、銃を向けた乗組員は即座に射殺され無残な屍を晒していた。


「聞こえるか指揮官、素直に降伏しろ」

<わ、私は、ディスティア帝国准将エーベル・バラックだ、貴様らはどこの国の所属だ>


キースに銃口を向けられた艦長は震えあがっていたが口調は強気のままだ。あくまでも敵に弱みを見せないつもりだろ。


「所属は知らなくていい、なぜ警告を無視した」

<デルタリアの船は弱いからだ>

「ふーん、お前らの船は紙でできているのか?」

<クッソ言わせておけば、今に見ていろ>


全く太刀打ちできないと判断したのか、エーベルはいきなり直立するとビシっと敬礼を始めた。


「おいおい早まるなよ、降伏しないとどうしようもないだろ」

<う、うるさい!偉大なるディスティア帝国にバンザーイ!>


残された手は自爆しかないと判断したのか、胸に手を当て識別マーカの自爆ボタンを押す。するとズズと船が揺れ始めた。


「緊急転送開始!即座に離脱するんだ」

「了解です艦長、機甲歩兵回収しました」


慌ててキース達機甲歩兵が暴虐に緊急転送されそのまま緊急発進、ほぼ同時に旗艦が大爆発を起こしデルタリアに向け落ちていった。


「ふむ、綺麗な花火だなクリス、これって星団法がまだ無いからじゃないの」

「そうだね、それにしても野蛮だね」

「艦長、デルタリア軍らしき通信を傍受しましたモニターに出します」


デルタリア宇宙軍からお伺いと取れる通信が入って来る。戦いの一部始終を見ていて驚愕していたのであろう。画面に映し出される艦長と思わしき軍人は大汗をかいていた・・。


<あーこちらデルトリア宇宙軍、国籍不明艦聞こえるか?>

「あー、聞こえるよ、こちらデルタ宇宙軍アーレイ大尉だ」

「貴官の戦いぶりに驚愕しているところだ助けていただいてありがとう。ところでデルタ宇宙軍とはどこの惑星だ?一度お会いしたい」

「詳しいことはここでは話せない、そちらの座標を教えてくれ直接向かう」


デルタリア軍から連絡を受けアーレイは早速、デルトリア宇宙空港に降りそのままシャトルに乗り換え作戦司令本部に案内される。アーレイ達の時代とは違い、王宮から離れた場所にその施設はあった。会議室に案内されると古めかしいデルタリア時代の軍服を着た司令官達が入室して来る。


「初めましてデルタリア宇宙軍総司令グウィン・フリッカーだ」

「初めまして司令官、デルタ宇宙軍大尉アーレイ・ウェブスターと申します」


初見だがアーレイは仲間だと思いガッチリと握手をする。するとグウィンは敵意が無い事が分かるとにこやかな笑顔と共にギュッと握り返してきた。


「君たちの船は見た事がないのだが、デルタ軍とは我デルタリアと関係あるのか」

「率直にいいますと400年後から来ました。あの船の名は”暴虐”私が設計し本日、処女航海の最中ジャンプコア暴走により時間を遡りこちらに出現したようです」


グウィンはアーレイが話す事を聞いて驚愕している。暴虐の圧倒的な強さ、自分たちの軍服に少し似ているアーレイ達を見て一応は納得したがまだ完全に信じてはいないようだ。


「ほ、本当なのか、まだ信じれん」

「グウィン司令、嘘言ってどうします?デルタリア共和国はデルタ王国に変わるのですよ。それにしてもここは変わりませんね上空から見た風景は今のデルタとほぼ同じです」

「なんとも信じがたいのだが・・」


キツネに包まれている感覚なのか司令官の表情は困り顔と言った方が正解だろう。


「うーん。。なぁキース、昔からあるデルタの名物ってなんだ?」

「そりゃパンだよパン、昔から良質な小麦が良くとれて400年前でも名物のはずだぞ。そうだ中心部に古いレンガ作りのパン窯のブレーメンって店あるだろ、あそこは老舗だ」


過去と現在で変わらぬ事を話せば信じてくれると判断したアーレイはキースに話を振る。もちろん細かい歴史を知らないためだ。そして意味を理解したのか老舗パン屋を引き合いに出してきた。


「なんと!ブレーメンを知ってるのか?50年前にできたパン屋だぞ、400年後もあるのか?」

「あー、あるよ、流石に当時の窯は店のオブジェになっているけどね、年に数回あの窯で焼いてくれるよ」

「おー、少し信じれるようになったよ」


流石に知っているパン屋の名前が出ると真実味が増したのか、司令官は緊張が解けて少し肩が落ちていた。


「司令官、デルトリアの被害状況は結構甚大な被害を受けているはずだ」

「共和国7ヵ国のうち首都が残っているのは5カ国、被害が無いのは・・」

「デルタ国だけですね、そこにアーネスト伯爵がいませんか?」


アーレイは歴史書で知っているアーネストに関する事を述べた。これで間違いなく未来から来たと確信を得る筈だ。


「なんでそれを・・ああ、若くして伯爵になった有能な人物だよ、現在はクーンの王になったが貴族籍はそのままだ」

「そうですか歴史の通りですね。一度お会いしたい気持ちはありますが、私の船は400年後の船なのでこれ以上関わりを持つのは良くないと思います。ですのでこの辺で失礼します」


デルタリア宇宙軍に味方として認識された以上この場に留まるのは歴史を変えてしまう恐れがあると判断したアーレイは自ら引き際を語りだす。


「そうですか、今のデルタリアの船は弱いのですディスティアの船は強くいつも泣かされています。技術とはもうしませんがヒントでもいただけると助かります」


弱い戦艦で必死に戦い苦労しているのか懇願するような表情に変わる。それほど切実な思いなのだろう。司令官はプライドを捨て去り素直に頭を下げてくる。


「うーん、キースどうする?」

「手助けしたいが、どこまでやったら良いかわからん」

「司令官、時間をください。私たちは先にデルタに帰る方法を見つけなければなりません時間が欲しいのです」


技術云々の前にアーレイ達は帰還する事が喫緊の課題だったりする。取り合えず問題を解決しないと始まらないと先延ばしの提案を出した。


「承知しました、それではいつでもお立ち寄りください」

「わかりました。それでは失礼します」


司令官はアーレイを素直に送り出した、しかし下士官は捕まえて暴虐の秘密を知りたかったらしい。アーレイ達が退出すると怪訝な顔をしていた。


「司令官、あの者を捕らえなくて良かったのですか?」

「多分身柄を拘束するのは無理だ、君も戦いを見ただろ技術が全然違っている太刀打ちできない、ディスティアの船を紙を燃やすように落としたんだぞ」


ディスティア軍を殲滅したことで味方の認識があり敵対するつもりのなかった司令官は、目の前に現れたアーレイ達が威風堂々と何ら恐れる様子を見せない事から拘束するのは無駄だと悟っていた。


「ですが、調べるくらいはしたほうが」

「彼らの余裕の態度を見て気が付かないのか絶対なにかある。この場合無理をして敵対するようなことはしてはならない」


まだ彼らは携帯用シールド発生装置を開発できてないのでこの時代の兵器でアーレイを捕まえようとしても逆に自分たちが負けてしまっていた。司令官は冷静に相手の動きを分析し逆に友好的に接することで少しでも有用な情報を得ようとしていたのだ。


「わかりました・・・」


下士官は悔しそうな表情を浮かべていたが司令官に諭され諦めるしかなかった。


ーー


<<暴虐・艦橋内>>


司令官との顔合わせが終わりアーレイ一行は暴虐に戻ってきていた。


「さあ、アーレイこれからどうするか決めなきゃな」

「けどさ、よりによって400年前に来るとはねー、先に原因追及してからだね」

「アーレイ大尉こちらに、時空コアに不思議な現象が起きています」


指揮官不在の間、コア暴走の原因を探していた技官は倉庫に積んであった時空コアと共振している事を掴み慌ててアーレイに報告を上げてくる。


「なに?これなんで積んでるのよ、おかしく無いか?」

「私も疑問に思い積荷目録を確認しましたが、時空コアを搭載するとは明記されてません」

「取り合えず見に行こう」


急いで貨物室に向かいコアが収納されているコンテナを開けると、そこに見えたのは透明な強化ケースの中に鎮座している筈の時空コアが宙に浮いていた。当たり前だがコアが浮く事は無く、その信じられない現象を目の当たりにしたアーレイは頭を抱えていた。


「アーレイ、コアが宙を浮くことなんてありえない」

「なんなんだこれは・・・」


通常、コアは台座に鎮座し使用する場合は放電するようにエネルギーを放出する。なので宙に浮く事は絶対に無いはずだったがいまは思い切り浮いていた。


「よく分からん、誰が指示して積んだんだ?そもそもこの状態すら変だ」


アーレイは思考を巡らすがこのコアが直接の原因で過去に飛ばされたとしか考えられなかった・・。


ーー


<<数日後・暴虐艦橋内>>


奇才アーレイとて細かな技術的な事に関しては専門家に任せるしかなかった。なので必死にデーターを読み取り原因を追究している技術屋を傍から見ているしかないそんな状況が続いた数日後。事態が急に動き出す。


「艦長、ステルス装置のオフラインはコア、時空コアの共振が原因でそれを止めるには2つの距離を離さないと止まりません」


観測機を使いデータ収集を繰り返した機関士は距離を置くと数値がごくわずかだが変化する事を発見したようだ。


「凄く単純だね〜」

「早速コンテナを移動させて実験をします」


そして暴虐の主砲の発射口まで移動させたが変化がなかった。仕方なくデルタリア軍港に出向き時空コアを預け暴虐と距離を離すと共振が止み、中を浮いていたコアが台座に鎮座する事に。それから再度貨物室に積んだがこれといった変化はなかった。


「アーレイ艦長、原因はジャンプコアのマイナスプラズマと同期したのが原因です。ですので同量のプラスプラズマを与えれば元の時間に戻れます」

「そんなに単純なの?ステルスの不調の原因はわかったの」

「はい、物凄く単純でした」


結局、暴虐に搭載されているエナジーコアの出力が膨大でオーバーロードし過ぎて時空コアに影響を与えていたそうな。ステルス装置はその反動で一時的に使用不能になっただけだと判明した。


「それじゃ帰還の目途がついたのね」

「はい、間違いなく戻れると思います」


機関士は以前、時空コアを使い未来に物資を送った経験があるのだろう。なので理論さえ分れば元の時間に戻れると確証を得ていた。


<<デルタリア宇宙港>>


帰還の目途が立ちアーレイはグウィン司令官に連絡を取ると同時に面会を申し込んだ。


「司令、不調の原因が判明しました、調整後、再度ジャンプすれば元の時間に帰還出来るはずです」

「そうか、それは良かった」


グウィンに帰還の目途が立つと話すと少し残念そうな表情に変わる。もちろんそれは暴虐や最新技術が喉から手が出るほど欲しい為だ。一目見たアーレイは一発で諦めさせようととある提案をすることにした。


「今回の御礼と言ったら悪いのですが、シールド技術の一部を公開します」

「いいのか、だがそのシールドとは我々でも使えるのか」

「それでは副官、私を撃ってみて下さい」

「えっ?」


いきなり撃てと言われてビックリする副官、だがアーレイはどうぞと言わんばかりに立ち上がりその時を待っている。司令はコクリと頷き許可をだすと冷静にゆっくり静かに銃を構え撃った。


「撃ちます!」


「パン」っと軽い発射音が会議に響くと、ブン!青白くシールドが光り銃弾は力無くコロリと床に落ちた。


「えっ、なにそれ」

「す、凄い!だから言っただろそもそもが違うんだよ」

「あー、もしかして私達を調べたかったのですね」

「いや、その、はい」


真意を見抜かれ驚いた副官はバツが悪そうに頭を掻き、素直にハイと返事をすると恥ずかしいのか俯いた。


「ピンキー!」


シュンと姿を表すピンキーは理解しているのかレーザーソードを振り回しながら駄目押しの一発を言い放った。


「はいはーい、よかたね~、ぶっ殺されなくて〜」

「これはステルスロボット・・・」

「あー、この子はバトルドロイドです、少し感情が面白いですが」


何もない空間から突如現れた戦闘用アンドロイドを見たグウィンは驚きの余り後ずさり、副官の表情は真っ青に変わり果てていた。


「やはり、貴方は一枚も二枚も上手ですね」

「コイツは斜め上がすきなんです」

「クリス、五月蝿いわ!」

「あはは、クリス少佐とは信頼し合える仲間なのですね」


階級が違うクリスと冗談を言い合うアーレイを見たグウィンは、器の大きさを知るとともに彼らの存在が自分たちの未来へと繋がると確信したのか満面の笑みに変わる。


「それではシールド技術をお渡しします」

「ありがとうアーレイ大尉」


アーレイは携帯型シールド装置の技術を渡し、一路デルタに帰るための準備に入るのだった。


ーー


<<デルタリア宇宙港・発着所>>


アーレイ達は極秘扱いとされ誰の目にも触れること無く出発する予定だったが、空港に向かい暴虐に乗る寸前、微妙に聞いた事のある声がし引き止められる。


「暫し待たれよ、世はデルタ国国王アーノルドである!」


その場に現れたのは報告を聞いたデルタリア国王アーノルドだった。たぶん彼はアーレイがどんな奴か一目見たかったのだろう。


「ぷっ!まんまジェフじゃん」

「おい、アーノルド陛下の前で失礼だぞ」

「すみません、私達の陛下と顔も声もそっくりすぎて笑ってしまいました」


一言で言うならジェフそのものズバリだった。多少こちらの方がお年を召されているが、髭の具合とか風体が瓜二つだった。


「なんと、そうなのか!」

「うわぁ、喋り方もそっくりだわ」

「ふむ、バカにされているが何故か腹立たしくはならんな」


いつも通りに接するフランクな言い様のアーレイに対し親近感が湧いたのか、アーノルド国王から笑みがこぼれ落ちる。その表情をみた護衛や執事はホッと胸を撫で下ろしていた。


「陛下、とびっきりの秘密をおしえましょうか?」

「なんだ、それ聞きたいな」


緊張が解けた事で国王はアーレイが話す秘密を知りたくなったのか手招きをしていた。そしてゆっくりと距離を詰め耳打ちをすることに。


「わたしの名前で気が付きませんか?”ウェブスター”(小声」

「ま、ま、ま、まさか」

「ナイショですよ、ではこれでお別れです(小声」

「ああ、君がいてその名があると言う事はそう言う事か!フォフォフォ」


ウェブスター伯爵の事を良く知るアーノルドは驚愕の表情を浮かべている。いまの彼はクーン国王だが子孫が未来からやって来た事で何かを感じたらしい。


「ぷぷ、笑い方もそっくりだ」

「ゴラァ、アーレイ」

キース「なんかもう帰った気分になるな」

クリス「ああ、帰って報告の時に笑ってしまいそうだ」

陛下「そんなにぃぃ?」

3人「はい!」


名残惜しいがこの辺でお別れとなり、アーレイ達はアーノルドに別れを告げ暴虐に乗り込んでいくのだった。


「行かせて宜しいのですかアーノルド陛下」

「ああ、彼らの存在こそ未来のデルタリアが存在しているという証なのだよ」

「なるほど、彼らの存在が未来への約束なのですね」

「そういうことだ」


離れ行く暴虐を眺めているアーノルドはこの先苦難が続いても、彼らが存在する事で自分たちの子孫が受け継がれていると確信を得ているのか、司令官の言葉を聞いて二ッと口角を上げるのだった。


ーー


<<惑星デルタ・恒星圏内>>


「ジャンプ!」


デルタリア宇宙港を出発した暴虐は同じ場所まで来ると同じ手順で同じ出力を流しジャンプを行った。勿論時空コアには逆相違のプラズマを送り込み元に時代へと戻ってゆく。


「ジャンプアウト、デルタ恒星圏内確認」


そして時間を確認すると最初にジャンプした数秒後に戻って来たと確認される。


アーレイ「結局誰が時空コアを載せたんだ?」

クリス「隣に探査船があったから間違えたのかな」


結局、誰が積んだのか不明のままだった・・・。


おしまい。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


最後まで読んでいただいてありがとうございます。この話は半分ほど描いた物を息子に見せたら、”無いわ〜、と言われボツした話です。ですのでウェブスターの名は子孫と判明した事として設定にしました。

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