第2話、花を散らして・・上巻。

この話をボツにしたのは余りにも主人公と離れた話題で且つ本編ではマッダが暴露するだけで十分と考え掲載をやめました。今回改稿をする過程で表現方法を大幅に変えてみました。


題名の通り、性的表現が多い話なのでお嫌いな方はご遠慮ください。


ーー


あらすじ。


リッキー王子とフィリーサ王女の婚姻の話が持ち上がり始めた頃、幼馴染の上級貴族の娘アウローラと作った秘密の場所でアクシデントが発生、そして・・・。


ーー


美しい花が咲き乱れる大きな庭園。大人になろうとしている微妙な年頃の2人が無邪気に走り回り遊んでいた。


リッキー)「ねえアウローラ、このバラ園の秘密知っている?」


アウローラ)「何それ、知らないわよ」


遊んでいるのはガルーダ王国、第二王子リッキー・オブ・ビビアーニと幼馴染の上級貴族の娘アウローラ ・ペルティ。遠い親戚にあたる2人は小さいころから王宮で遊んでいた。この時リッキー15歳、アウローラ14歳。


「ここのバラ園って中心から広がるように丸いでしょ、実は中心に休憩場所があったらしいんだ面白そうだよね僕と一緒に入ってみない?」


「このバラ園て迷宮見たいよね、そんな秘密の場所があるんだ行ってみたね」


この大きな庭園は荊が広がり、迷路のように通り道が作られトンネルのように剪定されていた。その真ん中にある小屋は休憩場所として建てられていたが、荊に隠れてしまい数十年放置されている。2人とも探検気分でその小屋を探し中心部に近づこうとするが、やはり辿りつかない。


「うーん、簡単には行けないね」


「ねえ、この穴って中心に向かって伸びてない?」


見つけたそれは動物の通り穴だ、大きな大人は無理だがまだ少し小さい2人ならギリギリ通れる大きさだ。


「そうだね、行ってみよう」


「うふふ、ワクワクしてきちゃった」


リッキーが先頭で入っていくが引っ掛かった荊がアウローラに跳ね返りキャ!痛い!と悲鳴をあげいきなり棘の洗礼を浴びてしまう。


「大丈夫?、ゆっくり行こう」


「うん」


2人は慎重に穴の中を進み5mほど進むとレンガ作りの古い小屋が見えて来た、アウローラは枝の跳ね返りを嫌がり遅れて到着。


「おお、これがその小屋か」


「ま、待ってよ」


リッキーは穴を抜け立ち上がり周りを見る。そこは円形に敷き詰められたレンガによってその小屋の周りだけ荊がない空間が広がっているが窓から太い幹が伸びていた。


「おお、凄い秘密基地みたいだ」


「もう、早いんだから」


意を決しズズズと重い錆びついた扉を開けると部屋の中は荊で埋め尽くされていた。良くみると隅の床から太い幹が窓に向かって伸びている。


「うわぁ結構荒れ放題だね、けどここは誰も来ない秘密の基地が出来るな」


「そうね〜、ここを使うなら枝を切って掃除しなきゃダメね、だけど色々持ち込んで遊べそうね」


秘密基地としてのポテンシャルを実感した2人は、荊で埋め尽くされた小屋の中を眺め、まるで新居を建てる家主のように新しく何か新鮮な自分達だけの特別な空間を妄想していた。物思いに耽っていると2人を呼ぶ声が聞こえ、ハッと現実に戻され、隠れていることが急に罪悪感を覚え急いで外に出ると元来た道を戻っていくのであった。


「じゃ、また」


「うん、またね」


手を振り合い別れる2人は次回またあの小屋に行く事を口には出さないが、お互いの目を見て約束し、アウローラは恋愛感情のあの募る想いと近い感覚を覚え王宮を後にするのだった。


ーー


リッキーは庭師に選定方法を教わり小屋の荊を綺麗に刈り取っていた。乱暴に扱うと棘が刺さる厄介な枝を最初は恐る恐る切っていたが、慣れてくるとそのスピードが上がり気がつけば結構な空間が出来ていた。しかし払った枝を放置することは出来ない、数日掛けて運び燃やし毎日クタクタになるまで働いていた。


「よし、この頑丈な幹に板を掛けて階段にすれば上の空間までいけるな」


この小屋はロフトのような構造になっている。しかし元の階段は朽ち果て登れない、リッキーは数枚の板を持ち込み簡易な階段を作り二階に上がっていた。


「おお、ちょっとだけど庭園の全体が見えるぞ、アウローラが来たらビックリする筈だ」


自由に行き来できるようになった秘密基地の雰囲気は最高だ、隠れ家でどんな遊びをするのか、どこで本を読みお茶を嗜むのかとそのことを想像すると思わず顔が綻ぶ。そして最後に別れてちょうど1週間後アウローラがまた遊びに来る。


アウローラ)「リッキーを見ませんでしたか?」


侍女)「リッキー様は庭園にいらっしゃいます」


侍女にリッキーの居場所を聞き庭園にむかうアウローラは、待ち焦がれた恋人ではないが、その小屋に早く行きたい衝動の気持ちに駆られ軽い足取りで駆けていく。そしてワクワクする気持ちを抑え慎重に穴を潜り、あの小屋の前に立つとなんとも言えない爽快感が胸をよぎる。


「リッキー!」


「おーいここだよ、ここに上がっておいで」


「分かった!あら、扉が軽くなっている、あっ、まぁ、頑張って綺麗にしたのね」


扉の軽さが違っていた、そのことで余計に期待を膨らませ中に入ると、自分が想像するより何倍も綺麗になっていた事にアウローラの期待感がが急上昇。階段の途中から飛んだリッキーが目の前に現れ一瞬ビックリしたが喜びが勝っている彼女は笑顔で溢れていた。


「もうリッキー!ビックリしちゃったよ、ほらお茶とお菓子を持ってきたんだよ」


「へぇ〜、ここで食べたら特別な味がしそうだね」


2人はのんびりお茶を嗜んでいたが、リッキーの指に小さな棘が刺さり血が滲んでいることに気がつきアウローラは指を少し強引に自分の口にあて血を吸い出す。


「ねぇ、小さな棘が刺さっているよ、すぐに抜くから」


アウローラは胸元を止めてあるピンを抜き棘を取り出し始め針が刺さると、イテテと情けない声を出し今にも逃げ出しそうだった。


「リッキー、我慢しなさい」


懸命に棘を抜く事に集中しているアウローラ、リッキーは時折り走る痛みを堪え横を向いていたが、恐る恐る自分の指先を見た時、止めていた布がハラリと開き胸の半分程見えてしまいリッキーは目のやり場に困り赤面し目が泳いでいた。


「どうしたの?真っ赤よ」


「い、いや、何でもない」


「あっ、私の胸を見たでしょ」


「い、いや、見てない、無い」


「うそ、顔赤いのは見たからでしょ」


赤面、慌てる姿、これだけで態度で丸わかりだった。


「ほら、結構大きくなったよね、リッキーも年頃だから興味あるでしょ」


「わわ、アウローラはもう、そ、そんな事は無い!」


幼馴染だと羞恥心が湧かないのか、彼女は胸を張り強調するようにその下着に隠れている丘をリッキーに見せる。


「あら、わたしに魅力が無いの?ねぇ、私をお嫁さんにするって言ったの覚えてる?」


「いや、あの、もうからかわないで!子供の頃だよねちゃんと覚えているよ」


「私達あと数年で婚姻の相手を親が決めるんだよね」


「そうだね・・」


少し落ち込むリッキー、そう既にバウンデ王国から王女を娶る話が持ち上がっていたのだ。親が決めた話とは言え若い彼はつい表情に出てしまう。


「どうしたの?」


「ごめんアウローラ、バウンデの王女との話が決まるかもしれない」


「ええ、ホント?良い話しじゃないの王族同士の婚姻なんて凄く久しぶりよ、それでリッキーはその王女娶るんだよね」


ごめんは結婚の事を夢見ていたと思いつい出たが、意外な返しは貴族の娘としての役割と血の近さが原因で結ばれないことを理解し素直に出た言葉だ。リッキーは”側室なら”の言葉が頭をよぎるがしかしそれを口にすることはなかった。


「約束果たせないかも、けどそう言ってくれると助かる」


「ねぇ、小屋の2階に上がるよ」


謝る彼を見て話題を変える為か、その話題をこれ以上続けたく無いのかわからないが、2階に登ると言い出し、ヒョイヒョイと階段を上り少し遅れてリッキーも上がってくる。


「うふふ、2人の秘密の基地だね、ここ以外に景色がいいね」


振り返り無邪気に笑うアウローラを見つめるリッキーは少し大人になった彼女を意識してしまう。窓から流れる柔らかい風に乗り甘い匂いがリッキーの鼻をを刺激するとトトと動悸が強くなる。


「どうしたのまだ、悩んでいるの」


「な、何でも無いよ、あっ」


思い詰めた表情を読み間違えるアウローラはリッキーの手を取り窓際まで引っ張り景色に見入っていた。ねぇ、ほら、と言いギュッと握りしめられると、ドドっと心臓が高鳴り、そして振り返った彼女との距離が近すぎて彼は恥ずかしさと驚きの混じった微妙な表情をしていた。その伏せ目がちで恥ずかしそうな表情を見たアウローラの心臓も思わずトクンと強く鼓動を打つ。この時彼女はリッキーを男として初めて意識した瞬間だった。そして見つめ合う2人。


「な、なんか、変な気分よね」


感が良いのか、恥ずかしさからなのか、先に切り出したのはアウローラだった。


「そ、そうだね変だね」


その時、リッキーの体臭がアウローラの鼻を抜けると普段気にならないが今日は即座に女として身体が反応してしまう。


「ンン!」


下腹部に熱が籠り身体がフワフワし始め、なんとも言えない心地ち良さが全身を駆け巡り彼女は初めての快感に戸惑い俯く。もちろん距離の近いリッキーはほんの少しだが蕩けた彼女のその表情を見て自分の体温の熱の篭り様に戸惑いを覚える。


アーナ)「リッキー!アウローラ!」


遠くで2人を呼ぶ声が聞こえ急激に平常心が戻り、一気に冷めた彼女は気を取り直した。


「あっ、午後のお茶の時間よ」


「ん、うん」


まだ恥ずかしいのか声が出ずに頷き、僅か数分の甘酸っぱい世界から生還した2人はすでに何も無かったかのように声の主の元に穴を抜け、勝手知った庭園を最短で走り抜け駆けて行った。


マッダ)「やっと来たよ、庭園で隠れて何してんのよ」


アーナ)「マッダ、口が悪いですわよ」


息を切らし走ってくる2人、呼んだ声の主は第一王女ジョリアーナ、ちょっと口が悪いが、おしゃまな子供は第二王女のマッダだ。


アーナ)「お二人は仲がよろしいわね」


リッキー)「幼馴染だし」


マッダ)「そうね、昔から仲がいいよね!」


アウローラ)「そうですわよ」


「ふふ、さあお茶にしますわよ」


「はーい」


仲良し4人で楽しいお茶会が始まったが会話の中心は今晩の晩餐会のことだ。それはガルーダ貴族が一同に集まる特別な日なのだがこの会は何故か不定期。いきなり数日前に告知されるのだった・・。


執事)「陛下、神から連絡が来ております」


ロブソン)「分かった、すぐに行く」


1週間前、王宮のとある部屋の一角にある黒い箱のスイッチを押すロブソンの姿がそこにあった。


<王よ今年は開くと良い、薬は教会に送った>


「・・・」


もう一度スイッチを押すが、同じメッセージが流れるだけだった。


「神の声は絶対。。」


ロブソン王は硬い表情のまま部屋を出ていく。

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