第4話 元の世界に戻りたい? なら……わかってるよね?1

「……すみませ~ん、誰かいるのなら返事をしていただきたいのですが――――って、どどどど、どうしてそんな格好をしているんですかッ⁉」


 屋上に繋がる扉からひょこっと覗くように姿を見せた女の子は、俺を見るなり慌てて扉を壁にし隠れてしまった。


「あ~、どうかお気になさらず。この格好はデフォルトみたいなもんなんで」


「気にしますから! 早く服を着てください!」


「……はぁ、わかりましたよ。ちょっと待ってて下さいね」


 やれやれと俺は服を取りに行き、着用。こんな短期間に着たり脱いだり、ほんとなにをやっているんだか。


「もう出てきていいですよ」


「……ちゃんと着たんですか? 服」


「安心して下さい。着てますよ」


 俺が言うと、女の子はそーっと顔を覗かせてきた。


 嘘じゃないことが確認できたことで女の子は安堵しているよう。


「……取り乱してしまってすみません。私は〝クロダミサキ〟といいます。色の黒に田畑の田、美しいに咲くと書いて黒田くろだ美咲みさきです」


「これはご丁寧にどうも。俺は新山慎太、新しい山に慎みが太いで新山慎太といいます」


「新山さん、ですね。よろしくお願いします」


 黒田と名乗った女の子は俺の前まできて、お辞儀をした。


 綺麗なで律儀な人、それが俺の抱いた黒田さんの第一印象だった。


 黒髪ロングに端正な顔立、美人という単語がピッタリな子だ。


 しかし一番気になったのは格好、黒田さんは学生服を身に纏っていたのだ。


「……高校生ですか?」


「あ、はい。高校二年の代です」


「ということは、俺と同い歳ですね」


「そうなんですね…………あの、一つお聞きしてもよろしいですか?」


 構いませんよと俺は頷く。


「ここはどこなんでしょう? ついさっきまで私は学校で授業を受けていたはずなん

ですが、気付けば知らないこの場所に……しかも誰もいないし……」


「出身は埼玉じゃないんですか?」


「いえ、生まれも育ちもカナガワです」


 なるほど、どうりで知らないわけだ。俺は一人納得する。


「俺もすべてを把握しているわけじゃないんですが、どうやらこの世界は俺達が元いた世界とは違うようです。人の姿がないのもそのせいかと。事実、俺は一ヵ月と少々をこの世界で過ごしてきましたが、今日まで一人も見かけませんでしたから」


「一ヵ月以上も、ですか…………あの! この世界から抜け出す方法はないんですか? 私、どうしても戻らなくちゃいけないんです!」


 黒田さんは俺にしがみついてきて、必死に懇願こんがんしてきた。


「……あります。ただそれは、決して一人では成し得ることができない」


「わ――私も協力します! なんだってします! だから教えてください! その方法を!」


「……その言葉に、噓はありませんか?」


「ありません!」


 黒田さんの真剣な瞳を見て、俺はゆっくりと頷く。


「この世界から解放される方法、いや条件は――俺が〝童貞を卒業〟すること。すなわち――俺が異性とセックスすることです!」


「…………え」


 黒田さんの顔が徐々に青ざめていく。反比例するように、俺の股間は熱くたぎっていった。

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