第7話
一ヶ月、つまり30日くらい働いたあとに待望の服が到着!
あたしは青の軽装服、ラスクは赤のマジシャン服。
「うん、あれだね、悪くないね、うしし」
「どちらも動きを阻害しない、良い感じの服装じゃの」
これで訓練場にいったらもの見事に10秒で訓練場ロボットさんを撃破。
うごきやすいって、強い。
じゃあ出発かというとそんなわけでもなく。
少しの間このお屋敷で働かせてもらうことにしました。路銀は多めにあった方が良い。
なのであたしは通常はメイド服。最近やれることも増えて体力も向上するようになった。
メイドが板に付いてきたってことかな? 訓練場で毎日訓練しているからかな?
サカキボタン、ぐーたらぶしがラスクちゃんによってたたき直されている気がします。
そんなある日、大テーブルで休憩していると大旦那とラスクちゃんが書斎に入っていきました。なんだろ。耳を傾けると全部筒抜けなのよね、きつねを舐めちゃいけないよ。
「サカキボタン様について調べが付きました。昔の一国一城の主のご子息の可能性があります」
「はー、やはりそれくらいのものであったか」
「ただ、内乱で滅んでしまって、直系の子孫は残っていない模様です」
「榊牡丹は名前だけということか?」
「いえ、村にそう言う名前のものがいて、隠し子として育てられていたとの情報が」
「ほう、よく調べたの」
「13のころ、国の宝であったインテリジェンスソードを持ち帰る肝試しに参加して、落石に会い、そこからは生存不明だろうです」
「なるほど……あいわかった。ありがとうな」
ぞろぞろと書斎から出てくる。
「私はそんなわけで素性がよくわからんけど、仲間のままにするの? 仲間にするのやめる?」
「き、聞こえておったのか。なんでおぬしを見捨てるのじゃ? ハイ・エルフはそんなことせぬよ」
「そっか」
「そうじゃよ」
「そうじゃないと鎖骨をリジェネートしたときの激痛に耐えた意味がないもんな」
あれはすまんかった、わらわにもっと力が残っていればなどと言ってくるので、毎度おなじみ帽子盗みをして――器用さがあがっているから余裕だね!――、はわわ、とさせて気分を変えたのでしたー。
あたしたちにしんみりは似合わない。
そんなゆうちょうな生活を送っている中、都市中に鐘が鳴り響きました。カーンカーンカーン。凄い大きな鐘が。
メイド長に言われて青の軽装服に着替え、中央広場へ、ちみっこも既に到着していました。
「オークのスタンピードが発生した。北部砦は既に撤退している。この都市に来るぞ。戦えるものは総員戦え! オークに入られたらとんでもない被害が出るぞ! コボルトやウルフコボルトなんて比じゃねえ!」
オークかあ。凄い太っている二足歩行モンスターの一種で豚みたく見える。体力も凄く高くて、脂肪が分厚くて斬りにくいんだよな。花草水月ちゃん、フリーな経験値を力に。
『200ポイントある。全部回すぞ』
ドクン、力が湧いてくる。これで斬れればいいが。
さて北の方から進軍とのことなので、北の跳ね橋は閉じられ、扉にも強固な防御が固められている。大きい都市のため扉は何カ所かあるがどこも同じ様子だ。
「あのー、ぼたんどの」
「なんだねラスクちゃん」
「そろそろ抱えるのやめて降ろして欲しいのじゃけれども」
「やだ。足遅いんだもん」
「うう」
「ラスクちゃんストーンウォール使えたっけ」
「一応、ってレベルじゃけども」
「壁や扉が破られたら使うかもしれないなーっておもって」
「そっか、石じゃからな。階段状に配置できればいいのじゃが、出来るかのう」
さて出歩くのはこれくらいにして、配置につきましょう。最も数が多いとされている最北部の門へ。
ふう。ラスクをおろし魔導師部隊の元へ。私は弓が使えないから投石部隊だ。これでもかと言うほど石が積んである。でも足らんし、投げ返してくる恐れがあるよねえ。
北部かららりった豚どもがつっこんでくる。強力な魔法使いと弓使いは狙撃を開始している。
戦争開始だ。
狙撃が終わったら弓と魔法の乱舞の時間。とにかく門に近付かせてはならない。さすがに壁には防御結界が張られているので豚野郎に突破することは出来ない。
なのだが。
飛んでくるのだ、大岩が。壁に当たって壁に大打撃を与えている。
「巨大投石機を投入しているの!? 豚が!?」
「スタンピードはなぜか武具もあるし巨大攻城兵器もあるんだ。このままじゃ壁が崩れる。死ぬ前提で突撃隊を結成するしかない。」
部隊のリーダー長は悲痛な声でそう言う。
ここはきつねが一緒頑張りますか。
壁の上からバーンと飛び出し、豚の群れから後方に飛び出す。スタンピードの群れは人を最優先で狙うとのことなので群れが私に狙いを変える。
「何やってんだおまえ! 戻れるのか!?」
「投石機破壊してきます」
そういってもの凄いスピードでかけだしていった。
投石機はデカい音を発射する。それだけでどこにいるかわかる!
「うおおおおお!」
馬をも軽く超える猛ダッシュで投石機の場所へと到達!
そこには
ブタのオ-クがいた。
ブタのオークとは、豚が二足歩行した生物で、牛肉より価値がある。しかももの凄く弱い。
即座に首を切りインプラントに収納。他の投石機担当オークが殺しにやってくるが、まあ当たるわけないんだよね、あたしのスピード戦闘に、力しかないオークが。
リーチの長い槍やフォークで突っついてくる。
が。
ささっとかいくぐり、魔孔剣入り両手持ち花草水月で首をはねる。
なんだ、余裕だ。
投石機の縄にぶら下がっている重りをズタズタに切る。これで使えない。
それを投石機の数だけ行った。これで投石は安全だろう。
猛ダッシュは壁の上までジャンプする体力を残すためにせず、馬並の速度で走って帰った。
そうしたら門が激闘でさ、今にも崩れそうなんだよね。豚が自らの体重任せで開こうとしている。
先頭の方の豚は死んでいるだろうな、というレベルで押している。
もうあたしを狙っていない。門を突破すればもっと殺せるもんね。
「ラスク、あれは出来そうか!?」
もう魔法を撃ち尽くして呆然と立っているだけの魔導師部隊に声をかける。声届くかな。
「ああ、ボタン。すまぬ、夢中で撃ったので撃ち尽くしてしもうて」
「じゃあこれを飲め! 水はどこかにあるだろ!」
といって懐から仙丹を出す。そしてぶん投げる。そこそこ重い、器用さもあがっているのもあってぽてっとラスクの手のひらに落ちる。
「これは?」
「とびっきりの仙丹だよ! まあ飲んでみて、すんごい苦いけど!」
うげえ、という顔をしながら素直に飲むラスク。信頼関係が出来ておる。
「なんじゃこれ、力が、エーテルがみなぎってくるぞ! 例の作戦出来る!」
『獲得した経験値1200を全てエーテル量に変換。変換したエーテルはそのままエーテル残量として使えるぞ』
「よし、作戦開始じゃ! こい、
「じゃあな、豚ども、きえな」
なんとなくちょうど良い場所へと移動する。
「いくぞー!ファイア・レイ」
ラスクはあろうことに、私に向けてファイア・レイを放った。私の
周辺の豚数百匹は見事に溶けた。
「門から離れてくれぬか、補強する!」
そういって内側の部隊を一度離したら、綺麗な階段状のストーンウォールを作り出した。
「これ、本当に石で作ってるから効果時間無限なのじゃ、あとで直してくれ、すまぬ」
大歓声がおこる。投石はない、豚はいない、超絶に補強された門はある。北側の勝利は確定した。
この後まだ戦えるものが応援に行って、スタンピードは完了した。
「終わったー。この刺さった矢を外してもらわないと」
矢は抜くと血が出るからね。致命傷にならなかっただけよしとしよう。
青の軽装鎧ちゃんがちゃんとガードしてくれたんだよねーらぶらぶちゅっちゅ。
スタンピード戦、勝った。
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