第4話
「あああ、女将さん、私のきれいな髪の毛があああ」
「ボスを倒したんだから良しとなって」
「だってだって火が飛んでしっぽまでまるこげですよぉ!」
「しゅ、しゅいましぇん力を出し過ぎてしまったみたいでしゅ……」
しょんぼりとしながらあやまるちびっこ。彼女こそが今回の大活躍を成し遂げた「ラスク・クレイン」である。
「ハイ・エルフって本当に小さいねー。かわいいなあ」
「ひぃ!?」
「うそ、幼女趣味はない。この毛が焼けたことを恨んでるだけ」
「ひぃ」
「うそうそ」
あんまり恨んでなかったけど、あんまり。
「それで、ラスクは行くところでもあるの? 赤でかわいらしい洋服ももらったんだし」
「ないの……しいて言えば一度精霊樹にもどってここ150年くらいの成長を報告するくらい、かのう……」
「ヒューさすが長寿種。きつねも長寿種だけどね。物によっては万単位で生きたりする。私はどうだろうなあ」
「ね、年齢はいくつなのじゃ? わしは1150歳じゃが」
「あれ、まだ身長とか胸は成長しないの? 私は18! きつねの世界だと18の精神年齢は人間でいう18だね!」
あれなんか顔を真っ赤にしてるぞ。
「ハイエルフは2000歳くらいから本格的に身長が伸びるし、胸とかはあまり成長しないスレンダー種族なのじゃ。スレンダーといっても人間でいうDカップは平均的に成長するわい!」
「そっか、あと850年頑張れ」
私はニコニコしながらそう言うのであった。
「それで、本当に行くのかい?」
「うん、この子一人だとまた奴隷になっちゃうでしょ」
「なーらーんーわー!」
スッ。
「ね? 危ないでしょ」
「なんでじゃー、危なくないわーい!」
「まあ、危ないわね。今帽子取られてるのわからないでしょ。まずは周辺に気を配ることができるようになってからだね」
アハハハと笑い声で溢れるのであった。
さて、後始末やりますか。
後始末といっても、やれることは略奪野郎どもの拠点馬車の、荷台リサーチくらいしかないんだけどね。
さすが収奪者とあってか武器は状態がそこそこなものがそろってた。防具はなさそうだな。あれは体に合わせて作るもんね。
「後は死んだ豚の生肉……干し肉にする方法分からなかったのかな。後は……チェスト。中身は――宝石だ! 紫色! これで復興できるかもしれない!」
「あ、あ、あのじゃな、その宝石をこのロッドにつけるとわしがググーンと成長するのじゃが……」
「身長が?」
「魔法の力じゃい」
「だよね。うーん、ここのものは自由にとっていっていいといわれてるし、いっか、はめちゃお。そのロッドもここの物でしょ」
「ありがとうなのじゃ。このロッドはわらわの物だったやつで、その宝石を見つけて喜んでいるところを拉致されちゃったのじゃ」
なんかかわいいエピソードだなあ。ニヒヒ。
全部売られなくてよかったねと言いつつ宝石を手渡す。
ロリっ子は丁寧に頭を下げてから受け取り、何か文言を唱えて宝石をロッドに装着する。
まばゆい光がとかはなかったけど、紫色が内部から発光する、きらりと光るロッドになった。
すごーい。すごいすごい。
ラスクはまじまじとロッドを見た後、穏やかな風の魔法を出して。
「うん、これで魔法のコントロールが効くぞ。おぬしを助けるのも楽になるのじゃ」
とニコニコ顔で言いました。言ったんだよ。
ずきゅーん。
はぁぁぁん!
きつねの家族愛発動!
元来きつねというのは家族愛が強く、野生のきつねも家族総出で子供を育てたりするのだ!
それが! 今! 発動した!
「この子は! うちの子!」
「はぁ? おぬしよりわしは年上じゃぞ?」
「どうだっていい! はーいいこでしゅねーいいこいいこ」
「な、急に頭をなでくりまわすなっ、一体なんじゃ」
「なでなでちゅっちゅ、なでちゅっちゅ」
「ええ加減にせんか。【フライフォーアウェイ】!」
私は荷台から追い出され、地面をごろごろと転がっていった。いたいのも愛。
復興に資源をまわすため、さらに薄い野菜くずと豚肉のスープをいただきながら今後のことを考える二人。
「やっぱり自由都市アイビスに行くべきだと思うんだよね」
「あそこなら暮らすのは簡単だし、鎧なんかも手に入るしのう。武器は今のままでもいいかもしれぬけど。あ、おかわり貰えると嬉しいのじゃが」
ハイエルフって結構大食漢なんだなあ
「ん、なんじゃ?」
「よく食べるなーって」
「そ、その……3000歳くらいまではいっぱい食べて魔力量を増やす必要があるのじゃ。体力と魔力は比例しておったりする」
もじもじして答えたので全力でなめなめしようとするが全力パンチで迎撃された。くっそー。
ま、なるほどね。いっぱい食べて魔力をため込んでね。
女将さんに礼を言って借金して冒険セットを買う。
「もうちょっと右手のインプラントにはいるけどこんなもんか。ラスクのほうは?」
「豚を1頭と食料なのじゃー、わらわ体力ないからインプラントの容量も少なくて」
「それはしょうがないよ。しかし便利って思うね、こういうとき。この右手の手首ちょい下に埋め込まれたインプラントって言う名のただの小石」
「感じる重量ゼロで運べるのでしゅ。超古代超文明アクー文明の名残は凄いでしゅねー」
「でしゅ?」
「のののじゃ! なのじゃ!」
かわいいぺろぺろぺほぎゃあぶん殴られた。
「なんでこんな美人さんがこんな変態なんじゃ……」
ふふんとしっぽを揺らしながら女将さんに別れの挨拶をする。
「今までありがとうございました。薬草の採取に困ったらまた呼んでください」
「へっ、そんなことより借金に気をつけな、通常なら特に困ることはないけど、今回は500ユロルと金額が金額だ、利子の支払いで死ぬんじゃないよ」
「ウィッス。では!」
ラスクは一人一人丁寧にお礼を言っているので、井戸の水をインプラントに汲んで水の放出の練習をする。
井戸を壊さないようにある程度離れて。こうか?
名前不明の魔法のようなもの。そいつはアクアスプラッシュがごとく放出爆発し、豚小屋を一つ破壊した。
う、上手く操作できない。
しかし練習しておかないと200リットルのアクアプラッシュもどきを起こしてしまう。
再度井戸の水を汲み、考える。
そういや細かく収納物の整理整頓ができるんだよね、インベントリみたいなこともでき、置く動作もできたような……。
インベントリ内部の井戸の水を細かく分けて、500ミリリットル程度の水を作ることには成功。後はこれを水が飲める程度に放出すれば……置く。
べちゃ。
目標にしていた場所に水が置かれた。
ちくしょおおお!
ラスクがあいさつを終えるころには、なんとかちょろちょろ出る水を会得することに成功したよ……。
ラスクがすごくインプラントに詳しくて、ちょろちょろ水なんて屁じゃない様々な技を丁寧に教えてくれたときは井戸の水がちょちょぎれたね。
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