第3話 東北大捜索

 新白河駅に9時頃到着した。ホームから城が見えた。「あの城は何て言うのかな?」と、勇。吐く息が白い。

「小峰城」

「詳しいね」

「おじいちゃんが福島出身だからねぇ」

「どっちの?」

「ママ」

 

 小峰城は縄張りは梯郭式で、阿武隈川を背にした北端に本丸が位置し、本丸の南に二の丸、三の丸と広がっている。また本丸は周囲を竹の丸で囲んでいた。二の丸までは総石垣で固められていたが、三の丸からは一部が土塁となっていた。


 どこからかジライヤが襲いかかって来るんじゃと、勇はビクビクした。勇はどんぐりを探しながら道を歩いた。クヌギ、マテバシイ、コナラなどたくさん拾った。

 

 しばらく歩くと『ライコウ』という見慣れないコンビニを見つけた。🏪

 勇は大学時代に江戸文化史を専攻していたが、確か源頼光をソバ、酒呑童子をウドンと見立てた文献があったはずだ。

 店に入ると、様々なそばやうどんが置かれてあった。出石そばや高遠そばもある。

 思い出した恋川春町こいかわはるまちだ。

金々きんきん先生栄華の夢』って本も面白かった。

 金々先生って金八みたいなあだ名の主人公が登場する。

 当代随一の江戸で色事修行を志す金村屋金兵衛は、目黒不動門前の粟餅屋で粟餅が出来上がる間の夢の中で、酒屋の大店和泉屋清左衛門の婿となり、大金持ちとなる。遊びの手始めに自宅に芸者を呼び、後には吉原遊廓や深川の岡場所での遊びを極めるが、資金繰りが苦しくなって勘当される。夢から覚めた金兵衛は、色事や楽しみも粟餅ができる間の束の間の夢に過ぎないと悟り、故郷に帰る。

 金々ってのは流行にすぐ齧りつく人の意味だ。

 勇は中華そばを見つけて目を輝かせた。

 店員さんは狸みたいにまんまるな中年だった。ネームプレートには『近藤』とある。

「店員さんは源頼光の末裔なんですか?」

 織江は思い切って尋ねてみた。

「そうだよ」

 源頼光の生誕地は不明だが本拠地の多田もしくは、父の満仲が天延元年(973年)頃には平安京の左京一条に邸を持っていたことから、満仲邸であるともされる。若年の経歴は不明。同時代の中級貴族と同じく20歳前後で出仕し、満仲と同じく摂関政治を行っていた藤原氏に臣従して官職を得て財力を蓄えていたと考えられている。


 頼光四天王らとともに6人で摂津大江山へ向かい夷賊討伐を行ったという話がある。天橋立の山の成相寺には、寛仁元年(1018年)3月の日付で頼光らしき名(源氏朝臣の摂津の守)の花押(署名)入りの祈願文書があり、大江山夷賊追討の勅命が示されているが、定説となっていない。


 織江のスマホが鳴った。相手は上官の讃岐さぬき警部補だ。

「北海道で書上が目撃されたとの情報が入った、悉知しっちすぐに向かうんだ」

 

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