第2話 あちら側とこちら側

次の日


今日は爽真と一緒に学校に行くんだ。爽真遅れてきそうで怖いな...。昨日爽真が待ち合わせに遅れたときは遅刻しそうになったから..。

僕は朝の支度は完了してるから

待ち合わせまでまだ時間あるな。暇だしスマホを開こう。あ、昨日の投稿にいいねがついたみたいだ。

いいねは5件ぐらいついてる。あ、DMきてる。「パッチくん」っていう人から...。

なになに...。



パッチくん 「はじめまして!」

  

パッチくん「俺もGです。もしよろしければ繋がりませんか?」


僕は「パッチくん」のプロフィールや過去のツイート閲覧しどんな人なのか確認した。



そんなに荒っぽい口調じゃないしリプにも丁寧に返してる。この人はつながっても良さそうだ。


「もちろんです!フォローさせていただきます!」


あ、もうこんな時間だ。学校に行こう。


全力疾走で待ち合わせ場所の最寄り駅に向かったがギリギリの時間になってしまった。

息を整えるために立ち止まった。疲れて背中が丸くなり自然と目線が下になる。多分爽真はいないからこんなとこ見られないよね...。見た感じいないし。


「わ!」


「ぎゃぁぁー!!!」


え、なんで爽真いるの?しかもなんで隠れてたの?


「あ、驚いてくれてよかった!にしてもいつも5分前に着く周が俺との待ち合わせにギリギリじゃん。しかも息切れてるしどしたの?」


「...こっちこそなんでこんなに早く来てるの..?」


時間が結構押してるため、駅の改札に入り歩きながら話した。


「最近周と一緒に行くとき遅れてばかりじゃん。昨日も遅れたし。だから待たせるの申し訳ないし、周をびっくりさせたかったから。あと褒めてほしかったのもあるかなぁ。」


僕の方を見て君は理由を説明してくれた。...だから僕は君を好きになったんだ。


「ありがとう...。爽真は偉いよ。」


近くにいないと聞き取れないぐらいの声で無自覚にそうつぶやいた。心の声が思わず漏れてしまった。


「…!おぉ!周がデレた!珍しー。俺の顔見ながら言ってくれたらもっと良かったんだけどなぁ。」


きらきらと顔を輝かせて子供のように喜んでくれた。昔から変わらないな。変わらないのはいいことなのかな..。でも素直すぎるからこっちが恥ずかしくなる...。


「無理。これが僕の限界だから。これで満足して..///」


そっぽを向いてそう答えた。


「おやおや、周く〜ん照れてる?」


僕の方を覗き見しにやにやしながらからかってきた。おまけに僕の頬を指でツンツンしてる。


「て、照れてないから///」


僕らはホームについたと同時に電車がきたので乗り込んだ。いつもこの電車は普通に座れる余裕があるほど空いている。


席に腰をおろしどちらからでもなく自然に手をつないだ。歩いてるときは余り手を繋がないけど電車では繋いでしまう。この電車に乗ってる泉ヶ丘高校の生徒はあまりいない。

爽真の手温かいな。心まで温まりそう。指が絡まっているから更にぬくもりを感じることができる。


「うわ、あの人達男同士で手繋いでるじゃんwやばくねw」


「ほんとそれなww」


若者がくすくすと僕らを嘲笑った。その人達なりにヒソヒソ声で話しているような気がするが正直普通に聞こえる。


もう言わないで。否定しないで。聞きたくないし見たくもない。


「ごめん。」


爽真は繋がっていた手をそっと離し、いつもより暗く沈んだ声で一言だけ残した。


「…悪いのは爽真じゃないから。」


僕に降り注がれる視線から目を逸らし、正直な気持ちを述べた。


その後僕らは話すこともなかった。爽真のいつもの笑顔も無くなっていた。僕らの間にはなんとも言えない重く冷たい空気が漂っていた。


その空気のまま学校に到着した。一応別れの挨拶は交わした。

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