来世はクマノミになりたい

ななくさ

第1話 優等生の「最大の秘密」

 私立桜野谷高校の10分休憩での会話


「あのさ、周(アマネ)って好きな人とかいるの?」


2人の親しい(?)クラスメイトがほくろ笑んだ。


「いないけど。」


「へー。」


「でも、強いて言うならあの子かな…?というか恋人みたいな感じ。」


「お前、恋人いんのかよ!?誰!?」


「学年1位の恋人とか気になる。彼女も天才なのか?教えろよー。」


「…そこまで言うなら教えるよ。」


そう発言した瞬間2人の目が輝いた。顔にわくわくと書いてあるようだ。わかりやすいな。


「僕の恋人は…勉強だよ。」


「「……は?」」


僕が何気ない顔でそう言った。2人は呆れ顔で僕の顔を見ている。さっきの輝いてた瞳はもう無くなっていた。でも、その後彼らは僕の前言に反応した。


「まぁ、そうだよなw 勉強で忙しいのに恋愛する暇ないよなw」


「そう言って誤魔化してるんじゃねぇの?」


うっ…。やばい。図星だ。そこで表情を変えたら図星ってバレてしまう。こういう時は平然としていなければ。


「そんな訳ないよ。恋愛してる時間があったらその分勉強した方がいいに決まってる。」


「こんなこと言ってる奴に恋人なんているわけねぇよ。行こうぜ。」


もう僕の恋愛事情に興味を無くしたのか、2人はここから去っていった。

正直どっか行ってくれて良かった。これ以上問い詰められたら、僕の「最大の秘密」がバレてしまうとこだった。

あ、もうすぐチャイムがなる時間だ。授業の準備をしなければ。


今日は短縮の完全下校で総進(総合進学コース)と同じ時間に授業が終わった。いつもと比べ、すぐ下校時間になった。


今日は久しぶりに…!あああああ…!考えるだけど心臓がバクバクしてきた。

早く下駄箱に行って彼を待とう。僕は急ぎ足で階段を駆け下り、彼のクラスの下駄箱の近くに着いた。


完全下校なので下駄箱は相変わらず混んでいる。僕は邪魔にならないように端で待機しながらも、顔を出して、彼がいないか確認する。あ、この艶々に輝く綺麗な金髪…。


「爽真(ソウマ)!」


「あ!周じゃん!待っててくれたんだ!」


「暇だったからたまたま待ってただけだから。」


ああ、どうして僕は素直になれないのだろうか。こういうときは


「少しでも爽真に早く会いたかったから」


っていう僕の本心を言えてたほうが爽真が喜ぶってことはわかっているのに。2次元のツンデレはかわいいけどさ3次元のツンデレなんてめんどくさいだけじゃん....。

僕も素直になる練習したことあるけどさ、壁とかの前だとスラスラと僕の想いを口にできるのに本人の前だと素直に伝えられないんだよ...。なんか言葉が喉につっかえてる感じで。本当は言いたいのに言えなくて。好きであんなこと言ってるわけではないからすごく辛い...。




「たまたまかよ~。 じゃあ帰ろうぜ。」


僕らは学校から去り人気の少ない道に出た。


「!」


な、急に手を繋ぐなんて心臓に悪い…。自分でも分かるぐらい心臓がドキドキしてる。

嬉しいけど、恥ずかしいし、人気の少ない道っていっても少しは人いるから…。


「こんなことしただけで照れちゃってるの~?

相変わらず周は可愛いなぁ♡」


「て、照れてなんかないから!それに暑いから手離して。」


「そー誤魔化したってバレバレだから。」


「…!な、なんのこと?それに周りに見られるかもしれないから今は手繋がないでくれる?」


あ、やってしまった。いつもいつも強がってばっかりだ。ほんと可愛くない。なんで爽真はこんな僕のことを可愛いと言ってくれるのだろう?どうして僕のことを好きになってくれたのだろう?


「あ、そうだよな。こんなとこ見られたら暑苦しいって思われそうだよなぁ。」


苦笑い笑いのような笑みを浮かべてそっと手を離す君。思わず胸がチクッと痛んだ。


僕が刃を突き付けても爽真はいつもどうりだった。猫の様にツンツンしてしまうのはよくあることだけど無傷な訳ないよね。僕が爽真だったら家で泣いてるかもしれない


その後はこのことばかり考えていてよく覚えていない。ただ、下車した後、眩しい笑顔で「じゃあな。明日も一緒に行こうぜ。」って言われたのは覚えている。


ぼちぼち歩くと家に着いた。


今丁度夕食の時間が終わった。夕食の後は眠気がするので勉強はしないで少し休憩するのがルーティンだ。


どうして男女が結ばれるのが普通なのだろうか。ふとそんなことが頭をよぎった。そんな常識さえなければ僕らはもっと普通に付き合えるのではないのか。あの時みたいに必死に隠す必要はないのでは…。

そもそも生物には男女という区別なんてなかった。コピーを増やすだけでは異なる環境に耐えられないため新しい生命を作る方法として性別が出来たんだ。男女という区別が出来てから男女に対する常識が出来た。それは誰かの価値観の押しつけだと思う。

こんなことがなくなってみんなが自由に個性を示せれば…。性別を選べたら...。いや性別なんてなくても異なる遺伝子を作られたら...。

僕はスマホでしばらく開いていないTwitterを起動していた。そしてこう打ち込んでいた。



◯ LGBTQ+のGです。だからいろいろ苦労してきました。

  周りの目がものすごく怖い。

  性別に囚われない生き方をしたい。

  だから来世はクマノミになりたい。

  主にDMで絡んでくれる方募集しています。

  #LGBTQ+ #セクマイさんと繋がりたい

  #LGBTQ+さんと繋がりたい #ゲイ


  💭      RT ♡       


勢いであまりよく考えずにツイートしてしまった...。これでいいんだよね。アカウントはあったけどツイートしたことないから少し心配だな。


その後僕は集中して勉強し、疲れて寝てしまった。

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