第23章ー少年と隊長ー21

 被験者の男は身体に注射を打たれると、苦しそうな声をあげてもがいていた。そんな中、彼は淡々と作業をしていた。ケイバーは離れた所から観察すると尋ねた。


「今の注射は?」


「痛み止めの注射ペンタジンだ。これを先に打たなくては手術には耐えられないからな。痛みで途中、死なれたら困るだろ? それにすこし手を加えた特功性のものだ」


 そう言って話すと被験者の様子を見ながら、次の段階へと進んだ。


「で、ゲボルザークのじーさん。アンタの言う例の実験は今度は成功するのか?」


「ああ、前回のミスを私なりに幾つか見直した。恐らく今度こそ、『できそこない』にはならないだろ――」


「へぇー、そうかい。じゃあ俺はアンタの実験が上手く成功するように祈ってるよ。それにあの檻に入っているできそこないの連中は、いい加減処分してもらわないと困るぜ。ここは誰にも知られてない秘密の地下室だが、ここの檻が全部満帆になっちまったら入れる場所がねーからな。そこんとこ考えといてくれよ」


「……ああ、わかった。だが、奥の被験体。『No.68』はまだ様子見だ。あれは出来損ないになったがまだ使い道がある。あれは処分するな、私のお気に入りだからな」


「ん~、別にいいぜ。じゃあ、No.68はこのまま生かす方向にしといてやるよ。他は使えないヤツから処分しといてやる」


 ケイバーはそう話すとリンゴを手の平で転がしながら宙に投げた。


「――にしても、アンタも腐った奴だな。自分の理想の為にそこまでするなんてよ。俺にはお偉い科学者さんの考えている事がわからないねぇや。アンタの言う、『生体キメラ』って奴を早く拝みたいぜ」


「……」


  彼はそう話すとククッと笑った。

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