第23章ー少年と隊長ー19

「あいつはコレには興味がないからな。興味がないだけ、こっちは都合が良い。本来なら、職を問われる所だがあいつはコレには全く無関心だ。『バレない』限りはアンタに新鮮な被験体を届けられる。なあ、そうだろおっさん?」


「ああ、君の協力には助かる。君のおかげで私はこうして科学者として理想に一歩近づける。この遠い大陸にわざわざ来た甲斐があるよ」


 男は意味深に話すと手術用の手袋をはめた。


「アンタの理想に貢献できて嬉しいぜ。ついでにこっちも懐が潤って、俺としてはアンタが一番の客人だ」


 ケイバーはそう話すと、リンゴを噛りながら壁に寄りかかった。被験者は手術台に寝かされたまま身動きすらしなかった。ただ金色の瞳だけは動いていた。


 ゲボルザークと呼ばれる男は淡々と手術の準備に取り掛かっていた。その顔には狂気が秘められていた。男は注射器を手に持つと彼に質問した。


「君に問う。人体実験とは何んだ?」


「医学の発展だろ。でもアンタの場合は『進化』ってところか――?」


「ああ、そうだとも。実験人体は進化だ。だが、その進化する過程を阻むものがある。それは一体何だ?」


彼の問にケイバーは耳を傾けると、寄り掛かっていた壁から離れて近づいて答えた。

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