第23章ー少年と隊長ー17

――闇の夜空が月を不気味に照らし出す。静寂に包まれた真夜中、誰もいない廊下の階段の片隅でジャントゥーユは2匹のネズミを大事そうに可愛がっていた。


 ネズミは彼の醜い顔に恐れを知らない。人は彼の醜い顔に恐れる。だが、2匹のネズミだけは彼に怯える事もなく懐いていた。ジャントゥーユは2匹のネズミにチーズの欠片を与えると指先で優しく可愛がった。


 二匹の白黒のネズミに彼は名前をつけていた。白色のネズミがイル。黒色のネズミがヨル。足がすばしっこく、他よりも頭が賢かった。ネズミは彼にとって親友であると同時に、ペットのような存在だった。そして、彼の命令を理解出来る能力があった。ジャントゥーユは口から、だらしないヨダレを口から垂らしながらネズミにひっそりと話しかけた。


「お…俺の友達……俺の…――」


 彼はそう言ってブツブツと独り言を呟くと、身体を小刻みに揺すった。彼は自分の肩に二匹のネズミを乗せると闇の奥に紛れるように其処から立ち去ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る