第22章ーセフィロトの兄弟ー14

 

 遥か地上の彼方に、暗雲の兆しが静かに訪れていた。光さえも届かない深淵の谷の底よりも深い大きな切れ目ができた穴の真下に、古びた宮殿が建てられていた。


まるでひっそりと誰の目に触れる事も無く、隠されているかのようにそこに存在していた。そこに住むのは人でも獣でもなく。他のものとは異なる禍々しい姿や形をした『悪魔』達が住んでいた。


 魔窟と化したその場所に、邪悪な悪魔達は息を潜めるように存在していた。彼らの主が地獄門を叩き、黄泉の国から生き返ってこの地上へと再び帰還する日を待ち望むかのように――。


 太古の昔、一つの星と地上を巡って『悪魔』と『天使』が互いに憎み合い、激しく争った聖戦の時代があった。そのとき、戦いに敗れた悪魔達は巨大な『力』を失い。天使達の力によって多くは倒され、力有る者は強力な魔法によって封印された。そして、魔王の配下についていた下僕達は、悪の王と共に永遠に続く煉獄の奈落へと突き落とされた。


 その時、悪魔の力は大きく分裂され。そして、地上を天使が長く支配した。だが、それは偽りの『勝利』でしか無かった。巨大な悪の『力』は、決して滅びる事は無かった。彼らが知らない処で再び悪の王は地獄の底から再び目覚め。その時が来るのを静かに待っていた。遥かなる時の聖戦において、交わされたあの忌わしい因縁に『決着』をつける為に。


――ペルガモンと呼ばれる魔神殿に、そこに邪悪な悪魔達が一同に集った。力としてはまだ巨大とまではいかないが、そこに集った悪魔達はどれも強者だった。主君である悪の王に忠誠心を誓い。彼の側で仕えていた配下の下僕達は、戦いで生き残った悪魔達と共に魔神殿に姿を現した。

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