第22章ーセフィロトの兄弟ー4

 

「さあ、兄さん休んで――」


「ラファエル……」


「それに身体の傷もまだ、完全には癒えていないんだ。テミスの宮殿で彼と戦った時に、兄さんは相当なダメージを身体に受けていたんだから、動けるだけでも奇跡だよ」


「っ…ラファエル…――」


 ウリエルは彼の手を握ると、小さく返事をした。


「大丈夫だよ兄さん。私はここで、傍で看ているから安心して休んでくれ」


 そう言って話しかけると、彼の額に触って指先で前髪を直してあげた。


「すまない……」


「いいさ、兄さんは悪くないよ…――。兄さんの言いつけを守れなかった私が悪いんだ」


「っ……!」


 2人はお互いに謝ると、兄弟の仲直りをした。そこにガブリエルがドアをノックして中に入って来た。

 

「――入るぜラファ兄ぃ。テミスの宮殿だけど、ミカエルの移動が済んだ」


「ああ、ガブリエル。ずいぶん早かったな」


「ああ、早いうちに移動させたほうがいいだろ。それにあの宮殿は建て直さなくては駄目だ。全体的にガタがきてる。あんな所にミカエルを寝かすのも、俺も気がかりでならないからな…――」


「ああ、そうだな……」


「本格的な修復作業は明日から始めるそうだ」


 ガブリエルは彼にそのことを報告すると、頭を軽く掻いた。


「報告ありがとうガブリエル。助かるよ…――」


「ああ、別に気にするな。これが俺の仕事なんだからよ」


 ガブリエルは彼にそう答えると、ぶっきら棒な口調で話した。何も聞かされていないウリエルは彼に尋ねた。


「ラファエル。一体、何の話だ?」


「ああ、兄さんにはまだ話してなかったね。ミカエルの事なんだが、テミスの宮殿から私の宮殿アヴァロンに移したんだ。あそこは全体的に崩落の危険性があったから、ミカエルの身に何か起きた時は守れない。それにここだと、ちゃんとした治療を受けられる。兄さんには悪いが、これは彼のためでもあるんだ。黙っていてすまなかった…――」


 ウリエルはその話を聞くと彼らに怒鳴った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る