第22章ーセフィロトの兄弟ー3

 

「兄さん、やっと気がついたんだね――?」


「うっ……ラ…ラファエル……ここは……?」


 ウリエルは眠りから目を覚ますと、朧気おぼろげに手を差しのべた。


「ここは私のアヴァロンの宮殿だ。兄さんはあれから3日も眠っていたんだ」


「そ…そうか…――」


「兄さんがずっと眠っている間、アールマティが見舞いに来たよ。彼女はずっと兄さんの事を心配していた……」


 ラファエルはその事を彼に伝えると、着ている白衣を翻して、ベッドの脇に置いてあった椅子に座った。


「………」


「兄さん…――」


 ラファエルは口を接ぐむ兄の隣で話しかけるとそれ以上は言わなかった。差しのべた手を両手で握ってジッと見つめた。


「私は一体……?」


「兄さん、やっぱり覚えてないんだね?」


 そこで彼の記憶が曖昧な事を確認すると、遠回しで伝えた。するとウリエルは、いきなりベッドから体を起こして彼の顔に触れた。


『傷は…!? ラファエル、顔を見せてみろ!』


 彼の右頬に触れると、顔につけてしまった傷痕を確かめた。幸い傷痕は綺麗に消えていた。ウリエルはホッと胸を撫で下ろすと安心した溜め息をついた。


「ラ、ラファエルすまなかった……。私はどうかしていたんだ。お前を、お前をこの手で傷つけて…――!」


「兄さん……。傷なら治癒魔法を使って、綺麗に消えたから安心してくれ」


「ッ……!」


 ウリエルは、弟の顔に傷をつけてしまった事に深く反省した様子だった。酷く落ち込む兄の姿に胸が痛むと、そっと話しかけた。


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