第22章ーセフィロトの兄弟ー2

 遠い過去に埋もれた幼い頃の記憶。その記憶が不意に蘇った。美しい森に囲まれた奥に大樹の下で泣く子供がいた。


 小さな子供は木の下に踞って泣いていた。彼は自分の分身のような存在。そう、特別な『存在』だった。同じ日に生まれた事から、彼はその子供を自分の『兄弟』として受け入れた。誰もいない木の下で子供が泣いていると、彼はその子の傍に歩み寄った。



 どうして泣いているんだい――?



 ほら、僕がいるから泣かないで。



 さあ、一緒に手を繋ごう。



 僕はきみ。そして、きみは僕だ。



 僕達は唯一無二の兄弟なんだ。



 それは特別なことなんだよ。 

 


 さあ、ラファエル。



 幼い子供は自分に似た子供に手を差しのべると、一緒に手を繋いだ。彼と手を繋ぐと、泣いていた子供が泣き止んだ。その顔には笑みが溢れていた。2人は手を繋ぐと、草原の原っぱを小さな足で仲良く並んで歩いた――。



 ウリエルは深い眠りの中で遠い記憶を思い出すと、静かに瞳を開けた。視界には白い天井と彼を心配そうに覗き込むラファエルの姿があった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る