第22章ーセフィロトの兄弟ー5

 

「何をしている! そんな事をすれば…――!」


 ウリエルは2人に向かって怒鳴った。その様子は酷く慌ててるように見えた。


「兄さんそれについては大丈夫だ。移動の際、人目には触れないように彼には伝えたから――」


「だろ、ガブリエル?」


「ああ、テミスの宮殿にいた使用人達を全員他の場所に待機させたから、誰もミカエルの姿は見ていない。俺だってその事くらいわかっているさ。でなきゃ、大宗主のジジィが黙ってないだろ?」


 ガブリエルは2人にそのことを話すと、両腕を組んで壁に寄りかかった。


「――何があってもミカエルの姿は、他の天使達には見せてはいけない。それが『鉄則』なら俺はそれに従う。第一、この状況で誰が天界を守れる? 能天使の指揮官のおっさんが下界に囚われている以上、ミカエルは天界にとっては大きな力なんだ。それにアイツの今のあんな姿を他の天使達に見せられるか?」


 そう話すと深刻な表情で語った。


「ましてやヤツサタンに、瀕死の傷を負わせられたって言ったらそれこそ終わりだ。『神話』が崩れる。ああ、跡形もなくな。希望もなくなって、天界はもう終わりだ。みんな絶望的になるだろう。そうならない為にも、今の現状を俺達で維持するしか他ならないんだ……!」


 彼は2人にその事を話すと俯いた表情で、自分の腕をぐっと掴んで、やり場のない気持ちを堪えた。


 「それに天界だけじゃなく、下界も絶望的だ。最終的に魔族と戦えるのは俺達天族しかいない。そんな時に頼れるのはミカエルしかいないんだ。奴はあいつにしか倒せない。どんな強者が勢揃いしても、ミカエルを『抜き』で奴と戦うのは無謀過ぎる――!」


 ガブリエルは一人、そのことを深刻に受け止めていた。ウリエルは重苦しい雰囲気の中、彼らに一言伝えた。


「――何にしろ、ミカエルの今の姿を他の天使達には見せてはいけない。何があってもだ。それはわかっているね、お前達?」


「ああ、そうだね兄さん……」


 兄弟3人はそこで眠りについているミカエルの話をすると、新たに決意を胸にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る