第21章―竜と少年―22

 

「おい、ユング! お前、遅刻は駄目だぞ!  竜の奴らが腹を空かして待ってるんだ! 早く餌を食べさせてあげろよ!」


「す、すみませんカイトさん……! 今食べさせます…――!」


 ユングは慌てて餌やりに取りかかった。カイトは何気に彼に目を向けると、不思議そうな顔で話しかけてきた。


「ん? どうしたお前。何か顔が真っ赤だぞ? 熱でもあるのか?」


 カイトは何も知らずに尋ねてきた。ユングは彼にそのことを言われると、挙動不審になりながら突如慌てた。


「そっ、そんなことないですよ! カイトさんの気のせいじゃないですか……!?」


 ユングはさっきの出来事を必死に隠そうと下手にシラをきった。カイトはそんな彼の慌てる姿に怪しむと、そこで問い詰めた。


「怪しい~。てか、なんか隠してるだろ? その挙動不審な所とかめっちゃ怪しいぞ?」


『えっ…!?』


「あ~! やっぱり何か隠してるな!? 俺にも教えろ!」


 カイトは首に腕を回して問い詰めて吐かせた。ユングは問い詰められると小さい声でボソっと話した。


「え……? お前、今なんて言った……?」


「だっ、だから僕……――」


 再度聞き返した。するとユングは彼の耳元で、コソコソと打ち明けた。


「なっ、何ぃいいっ!? リーナさんにキスされただって……!?」


 衝撃的な話を打ち明けられると、そこで思わず仰天した声を上げた。


「しーっ、カイトさん声デカイですよ…――! 誰かに聞かれたらどうするんですか!?」


「はっ? マジか? おいおい、嘘だろ!? 俺でさえファースト・キスまだなのに、何お前だけ良い思いしてるんだよ! こいつ~、俺より年下の癖にマセやがって生意気だ!」


 カイトはその話を聞かされると、分かりやすいリアクションを見せた。


「リーナさんって、あの綺麗な美人な人だろ!? 何でお前なんかにリーナさんが……! くぅ~っ羨まし過ぎるぜ!」


「仕方ないですよ。リーナさんがいきなり、僕にキスしてきたんですから……!」


 彼にそう答えると、竜に餌をやりながら顔を反らした。


「そっ、そうだよな。リーナさんみたいな綺麗な人が、お前みたいなチビを本気で相手にするハズがないよな!? ハハッ、ハハハッ……!」


 カイトは半笑いしながら皮肉混じりに笑った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る