第21章―竜と少年―23

 

「ゴホン……! 起こってしまったことは、しょうがないとしてだな。取り合えず感想をきかせて貰おうか?」


「か、感想ってなんですか…――?」


「つまりアレだ。どうだった?」


「え? 何をですか……?」


「まーまー、惚けちゃって。それとも自慢か? 決まってるだろ!? リーナさんとのキスだよ!」


 カイトは急に怒鳴ると胸ぐらを掴んで顔を近づけた。


「どうだったか聞いてるんだよ! リーナさんの唇どうだったんだ!?」


「カ、カイトさん……く、苦しいです…――!」


「もったいぶって話さないつもりか!?」


「ううっ……!」


 彼に胸ぐらを掴まれたまま問い詰められると、顔をひきつらせながら話した。


「そ、そうですね……。プリンみたいに軟らかかったです…――」



『なっ、なに……!? それは本当か!?』



 ユングのその言葉に彼の脳内に衝撃が走り抜けた。 



 “プリンみたいにやわらかい”



 その言葉が14歳の少年の脳内を、ありとあらゆる角度で妄想させた。カイトは竜の餌やりをすっかり忘れると、その話しに食らい付いた。ユングのその話しに妄想を膨らますと、思わず生唾を飲み込んだ。


「そ~か、リーナさんの唇はプリンかぁ~。良いなー、俺もリーナさんにキスされたい!」


 カイトは大きな声で話すと肩を落とした。


「――でも、カイトさん。リーナさんはハルバート隊長の彼女さんですから、それは無理です……」


 ユングは然り気無くそのことを話した。


「そうなんだよなぁ。あ~、俺も美人な彼女が欲しい~!」


「カイトさんなら、直ぐに彼女さん作れるんじゃないですか? 顔も『普通』ですし」


「おい、なんか今の引っ掛かるのは気のせいか?」


 何気ない言葉にカイトは思わずツッコミを入れた。


「お前、俺のことブサイクだとか思ってね? これでも小さい頃は、女の子にモテたんだぞ?」


「そっ、そうですか……」



「ああ、多分お前よりかはイケメンだと思うぞ?」



「す、凄いですね…――」


 自画自賛して話す彼を横目に機嫌を損ねないようにと、やんわりと受け答えた。


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