第21章―竜と少年―15

自分の持ち場を終わらすと彼に報告しに行った。するとカイトが空いている柵の前でジッと立ち止まっていた。



「カイトさんどうしたんですか?」



「ん…? ああ、ちょっとな」



 彼の隣に並ぶと心配そうに顔を覗き込んだ。


「ここに入っていた竜は、俺のお気に入りだったんだ。バカで大食いの悪戯好きの竜だったけどさ、なんか急に亡くなっちまうと寂しいな……。こいつだけじゃなく、他の亡くなった竜達も埋葬できたら良いのに…」


 悲しそうにポツリと呟くと鼻を人差し指でこすった。



「カイトさん……」



「なあ、お前みたんだろ?」


「え…?」


鳥人族ファルクの連中にこいつらが殺されるのを…! 6頭も殺されて黙ってられるかよ、俺だってこいつらを可愛がってるんだ!」



「カイトさん…――」 



 ユングは彼に聞かれると、一週間前の出来事を思い出しながら一言答えた。


「その、すみません…僕、覚えてないんです。鳥人族に襲撃された時、意識がなかったので何があったのかも、全然覚えてないんです…――」


 カイトは隣でその話を聞くと黙って下をうつ向いた。暫く沈黙すると明るく笑った。


「そ、そうだよな。その為に飼われてる竜なんだから、戦いで死ぬのも当たり前だよな…? それに鳥人族相手じゃ勝てなくて当然だよ。生き残っただけ、奇跡と思わないとダメだよな。ははっ…ホント、あいつらには敵わないぜ……」


 カイトはそう話すと悲しみを堪えて力なく笑った。


「こうなるんだったら最後に腹一杯、エサを食べさせてやれば良かったな……」


 ポツリとそのことを口にすると堪えていた涙が瞳から溢れ落ちた。


「カイトさん…」



「っ…――!」



 顔からこぼれ落ちた涙を拭うと、カイトはその場から走り去って行った。ユングはそこで取り残されると柵の前でポツリと佇んだ。



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