第21章―竜と少年―14

「じゃあ、次は飲み水を新しいのにかえるぞ? お前は右側から一列に奥の囲いまで水を取り替えるんだ。俺は左側をやる。わかったか?」


「はい…!」


 右の端から奥まで一列に、水を新しいのに取り替える作業に取りかかった。囲いの前で水を取り替えていると、竜は鼻を鳴らして寄り付いてきた。まるで飼われている犬みたいに人懐こくなついてきた。


 ユングはワイバーンに慣れていたので、顔を人撫でしてあげた。顔を撫でられると、竜は長い舌で顔をベロンと舐めてきた。それがどこか生温い。まるで牛に舐められてる感じだった。


 囲いの前に置いてある水を新しいのに取り替えると、次の場所に移動した。そんな調子でやっているとカイトが水の取り替え作業を終わらした時にはユングは顔中が竜のヨダレまみれになっていた。


 びちょびちょになりながらも、ユングは水の取り替え作業を終わらした。カイトは振り向き様に声をかけるとその姿を目にした。ヨダレだらけになっている彼を見るなり、お腹を抱えて笑わずにはいられなかった。


『ブハハハハハハハッッ!!』


「お前、顔中がスゴいことになってるぞ!?』


 カイトはユングの方を見ながらケラケラと笑った。


「俺でさえそんな風にはなったことないけど、お前って意外と竜に好かれてるんだな!」


「わっ、笑わないで下さいよ…!!」


「くくくっ!」


 目の前で笑いを堪えながらもマジマジとユングの顔をみた。


「じゃあ、次は他の所を掃除するぞ?」


「はい!」


「よし。じゃあ、今度は隣の竜小屋だ!」


 カイトは元気よく話しかけると彼を引き連れて、もう一つの小屋へと向かった。2人は竜小屋の中を綺麗に掃除した。ユングは彼の指示どおりにテキパキと動いた。


 掃除の途中で自分の竜を見かけると、声をかけて挨拶をした。アルムは彼を見るなり、柵の前で首を長くさせながら甘えてきた。頭を撫でてあげると、アルムは喜びながら鼻を鳴らした。 ユングが直ぐに側を離れると彼の服を口でクイッと引っ張った。


「ダメだよアルム…! 僕は今、大事な仕事中なんだ! 仕事が終わったら、また会いにきてあげる!」


 そう言って甘えてくるアルムを優しく叱ると、上手く宥めた。クチバシを離すと彼をそこで解放した。どこか寂しそうな目をしていると、ユングはアルムの顔を撫でてからその場を離れた。


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