第21章―竜と少年―13

「ジフカ竜隊長、今さっきデッキブラシを持ってましたけど歩けるんですか?」


「ああ、一応な。歩行できる義足だから、歩くことには問題ないだろう。それに本人は仕事できるみたいだし、俺らが心配するまでもないさ」


「そ、そうなんですか…。でも、杖とか無いと不便じゃないですか?」


「さぁな。ジフカさんはそう言った弱い所は他人に見せない人だから――。さあ、とっとと掃除に取りかかろうぜ!」



「は、はい…!」



 少年はそう話すと竜小屋へと入って行った。 ユングは大人しく彼の後をついて行った。中に入ると小屋の中にはワイバーンが数匹いた。それぞれ囲いで締め切られていて竜達はそこで大人しくしていた。



「えっと…僕はユングです。カイトさん、今日からよろしくお願いします!」


「お、おう…! 俺はカイトだ。じゃあ、よろしくな!」


「はい!」


 2人はそこで挨拶を済ますと、軽く握手を交わした。カイトは彼の前で鼻を指でこすって照れ隠しした。


「…――にしても、さっきのは驚いたぜ。まさか本気でジフカさんを矢で射抜くなんてさ」


 カイトはそう話すと苦笑しながら悪戯に笑った。その悪戯な笑顔には幼さが見え隠れした。ユングは彼の隣で強気な口調で答えた。


「当然です! チビだからって大人の人に舐められたら終わりですよ! 出だしが肝心で言うじゃないですか、相手にあれくらいギャフンと言わせないとダメです!」


 強気な口調で答えると堂々とした態度で胸をはった。カイトはユングのその話しに頷いた。


「たしかにチビだからって舐められたら終わりだよな。お前って見かけによらず逞しそうだよな?」



「そ、そうですか…?」



「ああ、俺には真似できねーよ」



 カイトはそう話すと入り口付近に落ちている藁くずを鍬でかき集めた。落ちている藁を鍬でかき集めているとユングは彼に声をかけた。


「カイトさん、僕も手伝います!」


「よし! じゃあ、お前はあっちからやってくれ!」


「はい…!」


 彼から指示を受けると奥から順に囲いの前に落ちてる藁を鍬でかき集めた。2人は黙々と作業を続けた。20分くらい作業を続けていると、カイトは真ん中にそれを寄せ集めて一本の束にした。


「藁、けっこう下に落ちてましたね?」


「あいつらはイタズラ好きだから、人が目を離した隙にこうなってることが良くあるんだよ」



「そ、そうなんですか…?」



「ああ、あいつらには参るけどな。でも、そこが可愛いだろ?」


「ふふふっ。たしかに小さい竜とかって、やんちゃですよね?」


「ああ、だから目を見張らせなきゃだめだ。でないと、掃除が増えるだろ?」



「そ、そうですね…」



 ユングは落ちている藁を桑で全部かき集めると、彼らが掃除の時にどれだけ大変かを感じ取った。



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