第21章―竜と少年―12

 壁に矢ごと突き刺さった帽子を外すと、なにくわぬ顔でそれを手にとって咳払いをした。何もなかったように平静をよそうと、彼はそこで話を切り出した。


「…みごとな狙い撃ちだった。だが、いくらお前が弓矢が上手くても、竜の世話係りになった以上はみっちりと働いてもらうぞ!」


 ジフカは隊員達を一列に並ばすと、彼らの前を行ったり来たりして話した。お小言が30分くらい続くと、隊員の一人が手をあげた。


「竜小屋隊長、仕事の開始時刻は過ぎました! 自分は早く竜の餌作りにとりかかりたいと思います!」


「そ、そうか…! じゃあ、みんな早く仕事にとりかかれ!」



『了解です!!』



 全員はそこで短く返事をした。ジフカは最後に持ち場について話した。



「いいか、ここにいる奴らを全員あわすと 6人になる。2組のグループに別れて仕事に取りかかるぞ!」


 隊員達はそれぞれ2人組に別れると、自分達の持ち場へと向かった。


「おい、カイト! お前は新人のチビを連れて竜小屋の掃除に回れ!」


「了解です。じゃあ、俺とコイツで竜小屋の掃除に回ります」


 カイトと呼ばれる若い少年は、ユングと一緒に小屋の掃除をする事になった。ジフカは残りの隊員を引き連れると片手にデッキブラシを持ちながら解散と大きな声で号令をかけた。号令がかかると全員はそこで解散した。ユングはカイトに呼ばれると竜小屋へと向かった。大きな小屋の入り口に立つと、カイトは掃除道具をユングに手渡した。


「ほら、新人! これはお前が持て!」


「は、はい…!」


 ユングは掃除道具一式を受けとると何気に呟いた。




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