第21章―竜と少年―11

 

「じゃあ、ジフカ竜隊長と呼んでもいいですか?」


 彼がそう呼ぶとジフカは急に照れた。


「しょ、しょうがないな…! チビの癖に生意気だが、新人だから特別に許可してやる。よし、お前は今日から俺のことを竜隊長と呼べ!」



「はい!」



 ユングは彼の前で明るく返事をすると最後に言った。



「でもジフカ竜隊長、僕はチビって名前じゃありませんよ。ユングって名前がちゃんとあります。僕のことチビチビって呼んだら、その頭を矢で射抜きますよ?」


 そう言って笑いながら話しつつも細やかな反撃を口にした。周りの隊員は一瞬、固まって戸惑った。



「ハハハハハハハッ! こいつ~新人の癖にジョークが上手いな! ウイリアム・テルじゃあるまいし、そんな上手くいくかぁ?」



「じゃあ、試しに見せてあげましょうか?」



 ユングはそう答えると背中に背負ってた弓矢を手に、彼の頭の上に乗っていた赤い帽子を矢で射った。目にも止まらない早さで矢を打つと、帽子はそのまま矢ごと、壁に突き刺さった。


 頭に被っていた帽子を矢で射抜かれるとジフカはその場で失禁しそうになった。石のように固まる彼を前に、他の隊員達は唖然となりながら声をかけた。



『竜小屋隊長、大丈夫ですか…!?』



「だ、大丈夫だ…! これくらいの事で俺が驚くはずがないだろ!?」


 ジフカは隊員達の前で平静を装いながら答えるが、明らかに動揺していた。彼の眼にはユングはこう映った。



 一見、人畜無害に見えても油断できない奴。



 むしろ本気でヤりやがったと思うと、彼はそこで半笑いせずにはいられなかった。


 

 冗談が通じないヤツほど怖い――。



 ジフカは豪快に笑い飛ばしながらも肝を冷やした。



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