第21章―竜と少年―10

「いいか一度しか言わないからよく聞け! まずここの竜小屋の責任者はマードックとこの俺だ! 確かにハルバート隊長や、リーゼル隊長は俺らの隊長だが、お前もここの係りに加わった以上は今日から俺達はお前の隊長になるわけだ! ここでは竜小屋隊長は俺とマードックだ! そのことをよーく覚えとくんだな!」


「わ、わかりました…! でもジフカさ…――」


『ジフカ竜小屋隊長だ!』



「えっ…!?」


 義足で杖をついている中年の男は、すかさず吠えた。ユングは突発的にそのことを言われると戸惑った。


「ジ、ジフカ竜小屋隊長ですか…? なんか呼びづらいです……」


 ユングのその言葉にジフカは目を鋭く光らせた。


「あぁん? 今なんっつた? チビの癖に口答えか?」


「い、いえ…口答えだなんて。て言うか、僕はチビじゃありませんよ!」


 ユングは細やかな反撃を口にした。ジフカは彼に杖を向けるとビシッと怒鳴った。


「いいかチビ! いくらリーゼル隊長に可愛がられてるからって言ってもこの俺は絶対に甘やかさないからな! 口答えする奴は竜小屋隊長の特権をいかしてスクワット100回の刑に処してやるからな!」


『なっ…!?』


「それが嫌なら、竜小屋隊長には逆らうな!」


 ジフカはそう話すと不敵な笑みでニヤッと笑った。


「でも、ジフカ竜小屋隊長って呼ぶの長いです…!」


『なんだと…!?』


 ユングは再び意見を言った。すると隣にいた若い少年の隊員がそれを見てヒソヒソと話しかけてきた。


「あ~、お前何もわかってないな。ジフカさんは隊長って呼ばれるのに憧れてるんだ。ジフカさんは義足だから竜に乗れないんだ。だから隊長のボジションになりたくて、その願望があんな風な形で今頃でてるんだ。まあ、年寄りのマガママだと思って聞いてやってくれよ」


「はぁ…なるほど、そうだったんですか…――」


「お前のトバッチリで俺達もスクワットの刑に処されるのだけはゴメンだからな」


 若い少年は長い前髪を手でかきあげて、隣でその事を話しかけた。見た目は十代前半に見えた。ユングは彼のその話しに苦笑いを浮かべた。


『ゴフォン!』


「……そんなに言いづらいなら、ジフカ竜隊長と呼んでもらっても構わないぞ?」



 彼は少し照れた感じで咳払いをすると、口に手を当てて話した。ユングは彼に促されるとその話しに便乗した形で返事をした。

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