第21章―竜と少年―5

 色々と悪い噂ばかりを聞くと、ここを辞めたい気持ちにもなった。でも、家族の事を考えると簡単には辞めれなかった。それにこんな大陸では良い仕事にもありつけない。かと言って大陸ここを出て、生まれ故郷を捨てるワケにもいかない。


 確かにここの環境は最悪だ。年中、雪が降っている。夏の季節は雪は降らないけどそれ意外は降っている状態だった。たまに降らない時もある。でも、直ぐにまた雪は降る。昔、ここは緑の豊かな土地と聞いた。今よりも作物は豊富で、森には色々な動物がいたらしい。でも、ある境を期に緑は減った。そして、そのかわりに大地には雪が降り積もるようになった。ここグラス・ガヴナンは、かつて豊穣の牝牛と呼ばれる緑豊かな大陸だった。そのワケには1つだけ理由があった。それはこの大陸では古くから豊穣の神様が祭られていた。


 牝牛はその象徴であり。豊かな恵みをもたらすとも言われた。古い言い伝えではこの大陸に住む人々は、その昔、大規模な飢餓に苦しんでいた。大地には悪い病気が蔓延して作物を耕しても直ぐに枯れてしまい。人々は食べる物に困っていた。そこに神様が現れた。神様は牝牛の姿となってこの大陸に住む人々を飢餓から救ったと言われている。


 その際に大地は緑豊かな土地となったと聞かされた。そして、多くの恵みをもたらしたとも聞かされた。それ以来、ここの人々はその神様を豊穣神として崇め。牝牛を大事に育てた。



――でも、そう言う風習は何れ薄れて行く。



 人々が有り難みを忘れた時、その大切なことに気づかされた。ここの人々が豊穣神を祭っていたことさえ忘れてしまうと神様が怒った。そして、この大陸から恵みをもたらす神様がいなくなると、大地には緑がなくなり。雪が降り積もるようになったと聞かされた。


 のちにこの雪は神様の涙とも言われている。この雪が今だに大地に降り続くのは、その神様が今も泣いているからと聞かされた。そして、今はその雪に僕達は苦しんでいる。大地は雪に覆われているから、なかなか作物は実らない。それに森に住んでいる動物も次々に消えて行った。僕が生まれた頃には、もうそれが始まっていた。


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