第19章―温かいスープ―4

――数日後、再び少年はクロビスにイビられた。真夜中に騒ぐなと命令されても、少年の夜泣きはおさまらなかった。そこでクロビスは少年に制裁を与えた。それは2日間の食事抜きの制裁だった。これで少しは懲りるだろうと彼は思った。2日間の食事抜きの制裁を与えるとその翌日、少年は衰弱していて弱っていた。クロビスは他の看守から報告を受けると、机に肘をついてため息をついた。



「――ったく、あのガキ。この私に面倒ばかりかけて……!」



「どうしたんだクロビス?」


 苛立つ彼の前にケイバーはノンキに部屋に入ってきた。


「勝手に人の部屋に入るな…!」



「そんなお堅いこと言うなよ。で、どうしたんだ?」


「お前には関係ないだろ!」


 クロビスは不機嫌な顔で言い返すと、机をバンと叩いた。


 ケイバーは椅子に座って足を組むと苛立つ彼を見ながら、ニヤニヤして笑った。


「そんなカリカリすると身体に毒だぞ。どうせあのガキのことだろ? そういえばさっき廊下で耳にしたんだ。あのガキが弱ってるってな。さすがにあのままじゃ、まずいんじゃないのか?」



「黙れ…――!」



 クロビスは苛立ちながら怒鳴った。ケイバーはその様子を伺いながら一言話した。


「――まあ、とにかくだ。あのガキを苛めるのも程々にしておけよ。お前もあのガキが死んだらまずいだろ?」



「ッ……」



「こんな事を言うのもなんだが、さっきあのガキの様子を見に行ったら、体調が悪そうな顔してたぜ。なんか食わせないと、まずいんじゃないのか?」


 ケイバーは彼にその事を告げると、持っている林檎を宙に投げて手の上で転がした。



「アンタに用はそれだけだ。お邪魔したぜ」



 彼はそ言って椅子から立ち上がると早々に部屋から出て行こうとした。するとクロビスはそこで声をかけた。


「フフフッ。今ので良いことを思い付いたぞ」



「へぇ、どんなことだ?」



「確かにあのガキに死なれるのは困るな。食事でも与えるか」


 クロビスは机の前で頬杖をつくと悪に満ちた顔で、ニヤッと笑った。ケイバーはその話しに耳を傾けると、彼がいる机の側に移動してその上に腰を下ろして座った。


「どんなイケない事を思いついたんだ?」



「チェスターって名前の新人の看守がいただろ?」



「ああ、あのチキン野郎か? 死んだオーチスの部下だった男だろ?」


「ああ、そうだ。あいつにここの洗礼を受けさせる絶好の機会だと言っとこう。ここがいかに恐怖と呼ばれる牢獄かを、あいつにわからせてやるんだ」



「へぇー、それまた良いアイデアな事で。さすが恐怖の支配者様だ」



 ケイバーはその話しに興味津々で尋ねた。


「で、どんな洗礼だ? 噂じゃ、奴は他の看守達にイビられてるから程々にしとけよ。でないと逃げ出しちまうかもな」


 ケイバーは机の上に腰をかけるとワル顔でニヤついた。



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