第18章―虚ろな心―24
首筋にキスをすると赤い痕が浮き出た。薔薇の刻印のような赤い痕を首筋に残すと今度は胸元にキスをした。啄む口づけに、彼は再び声を殺して乱れた。声が出そうになると右手の甲で口を押さえた。そんな彼の乱れる姿が、より一層美しい官能的な姿にさせた。ケイバーはネクタイを外すと上着と着ているYシャツを脱いだ。そして、彼をソファーの下に押し倒した。
下に沈められた彼はピンで留められた蝶のように美しかった。ゾクッとするような妖艶な美しさを纏った彼を間近で見ると、ケイバーは息を呑んだ。どうみても魔性を秘めてるようにしか思えなかった。見れば見るほど、何かに惹き付けられるような気がした。その美しさにみとれるとケイバーは彼の唇を指先でなぞった――。
「ヤバいくらいアンタはとびっきりの美人だ。なあ、キスしてもいいか?」
「ふっ。そんなことを一々聞くな……」
クロビスは酔った口調で彼に言い返すと、不意に首に両手を回して抱きついた。
「ンっ……」
それを合図に2人は唇を重ねた。その場の雰囲気でキスをすると、彼の唇はほのかにワインの味がした。うっすらと瞼を開けるとクロビスは瞳を閉じたままだった。首に両手を回した手は、まだ離れなかった。不意に何かに気がつくとケイバーは キスをやめて彼に話かけた。
「おい、クロビス…? ま、まさかお前……?」
然り気無く体を揺らすとケイバーはある事に気がついた。何と彼はキスをした直後にいつの間にか眠りについていた。その瞬間、ケイバーはガクンと肩を落とした。
「おいおい、何だよ。寝ちまったのか? マジか、コイツ? ったく…だから酔っぱらいは困るんだ」
ケイバーは呆れたような顔をすると、仕方なく彼を両腕に抱えてベッドに運んだ。
「本当はこのまま寝込みを襲いたい所だが、今回は許してやるよ。まぁ、アンタの意外な素顔も見れたことだしな…――」
ケイバーは寝ている彼の寝顔を覗き込むとクスッと笑った。傍から離れると不意に手を掴まれた。クロビスは寝ながら彼の手を掴んでいた。ケイバーはその掴まれた手を外そうとしたが、なかなか外せなかった。そこで呆れてため息をつくと彼も一緒にベッドの中に入った。クロビスは完全に深い眠りについていた。ケイバーは彼の寝顔を黙って見つめると自分も次第に深い眠りについたのだった。誰もが眠りにつく真夜中、ただ静かな雨音だけが外に響いた――。
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