第19章―温かいスープ―1
――薄暗闇の中、どこかで石を削る音がした。一番奥の牢屋に小さな少年がいた。彼は壁に石を擦り当てて印をつけていた。壁中には、1の印が沢山つけられていた。少年はそれを眺めながらただ黙って爪を噛んでいた。今日も牢獄の中は寒かった。すき間風が外の冷たい空気を運んだ。少年は壁の隙間から出来た穴を覗きながら外の景色を伺った。
永遠と続く長い時間は少年にとっては一日が100年に感じる長さだった。少年は外の世界に恋い焦がれた。長年、外の世界に出ていないせいか、空想の世界で外にいる自分を描いていた。
彼の願いは一つだった。それはここから出で自由を手に入れる事だった。しかし、その願いは叶わない。両手と両足につけられた長い鎖が、彼の自由を奪っていた。
少年は何故、自分がこんな罰を受けなくてはならないのかと未だにわからずにいた。そして、その怒りの矛先はこの「世界」と「神」に向けられた。怒りと憎しみは少年の心の奥で確実に育っていった。
この世に神などいない!
この世界を破壊して、全てを壊してやる!
何もかもだ!!
少年は心の中で怒りを吐き出しながら憎しみの炎を燃やし続けた。
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