第18章―虚ろな心―23

「ああ、そうだ。そんな話を聞くと改めてアンタにびびっちまいそうだ。でも、そんなアンタの狂気の部分に俺は自分を重ねちまいそうだぜ。俺もアンタと同じで残酷な男だ。今さら人を何人ブッ殺しても感じやしねぇ。そんな所が俺とアンタは似ている。いや、アンタに初めて会った時から、同じ匂いがすると思ったんだ。なんだったらアンタが周りから嫌われ者になっても、俺だけは傍にいてやるぜ。同じ境遇同士、傷の舐めあいも悪くはないだろ? どうせ酔ってるならトコトン酔えよ、そんで朝になったら全部忘れてるだろ――?」


 クロビスはその言葉にフッと鼻で笑った。



「誰が同じ境遇同士だ。お前と一緒にするな…――」


 クロビスはそう言い返すと白ワインを一口飲んだ。


 視線をそらすとケイバーは彼の顔に触れた。



「もう黙れよ。本当は今、誰かに甘えたいんだろ?」



「私が…?」


「ああ、目がそう言ってるぜ?」


「目が…?」


「アンタの目は寂しい目をしている。言わなくても俺にはわかるんだ」



「じゃあ、何だと言うんだ…?」



「俺に甘えろよ――」



「お前に…?」


「ああ、そのほうがアンタも楽だろ。今は何もかもを忘れて、俺に身を委ねるんだ」


 ケイバーは怪しく彼の耳元で囁くと、彼の手からワインボトルを取って、それを床の下に落とした。耳元で囁く声にクロビスは虚ろな瞳で天井を見上げた。ワインを飲み過ぎたせいなのか。彼はその場の雰囲気に酔った。ケイバーは彼の白い首筋に歯を立てて、軽く噛んだ。その快感に体をゾクゾクさせた。


「ンッ……」


 首筋を軽く噛むと今度は舌で舐めた。怪しく舌で首筋を舐められるとクロビスは僅かに感じた表情を見せた。


「…ッ…ハァ……」


 彼の声を殺すような吐息は、どこか艶かしかった。クロビスは抵抗せずにただ彼のやりたいようにやらせた。ケイバーは彼の艶かしい姿に、つい思わず見とれた。


「アンタもそう言う顔するんだな。色気があり過ぎて怖いくらいだぜ」


「だ…黙れ…っ……」


「っ…――」


 そう言って目の前で言い返す彼の姿は色気すら漂わせた。沈黙に包まれた部屋の中で、ただ暖炉の焚き火が燃える音だけ聞こえた。クロビスは、彼の膝の上で一時の快楽に溺れた。左肩から、Yシャツを少しずらすと胸元が見えた。彼の素肌は雪のように白かった。そんな綺麗な素肌にそっと口づけた。





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