第18章―虚ろな心―7
夜も深まる頃、誰もが眠りにつく真夜中。タルタロスの牢獄にある塔の天辺に一羽の黒い鳥が舞い込んだ。黒い鳥は姿を現すと幽閉されている父親、カマエルに話しかけた。
「お父上、例の計画ですが順調に進んでおります。今回の計画には獣族と鳥人族に協力を煽りました。どれも父上の古き友人ばかりです。この計画が外部に漏れる事はないでしょう。それに彼らも焦っております。彼らも私と同様に同じ思いを抱えております」
黒いローブを纏った男は、牢屋の中に囚われているカマエルに報告した。
「ご苦労であった息子よ。では、引き続き計画を進めるのだ」
「御意…――!」
男は、父の話しに跪いて返事をした。
「この計画には彼らの助けと協力が必要です。そして、この計画は天界の方にはまだ見抜かれておりません。ですので出来るだけ早く計画を進める為にも今暫くご辛抱下さい」
「お前には迷惑をかけるな――」
「いいえ、全ては父上のご帰還の為でございます。貴方様の身体は長い地上での束縛により。体力ともに落ちて今ではその体は蝕まれております。一刻でも早く天界にご帰還して、ラファエル様の治療を受けなくてはなりません。ラファエル様だけには、すでに話しておりますのでご安心下さい」
息子の話しにカマエルは、そこでジッと考えこんだ。
「本当でしたら誰にも頼らずに貴方様をこの牢屋から出して差し上げたですが、この牢屋には目には見えない強力な呪文が施されております。残念ながら、我ら鳥人族や半獣族や天使でさえも、この呪文がかけられた牢屋に触れる事は敵いません。この牢屋に触れることは、人間族でしか触れられないのです。さらにこの牢屋を開けるには――」
「息子よ、解っておる……。この忌まわしい牢屋こそが我が肉体を内側から蝕んでおるのじゃ。出来ればこの牢屋を自身の力で打ち破りたいが、それは敵わん。それにここでは、どんな能力も封じられる。悪の力は巨大だ。そして、その力を操る者の手により。この牢屋には強力な呪文がかけられておる。やはりお前の言ったとおり、あれを手に入れるしかあるまい……」
誰もいない塔の天辺でカマエルと黒いローブを纏った男は、神妙な顔で密会を重ねた。彼らはそこで、ここから脱獄するための密かな計画を企てていた。
「では、私は引き続き計画を進めます――」
彼は父にそう言い残すと、黒いローブを翻して後ろを向いた。するとカマエルは一言彼に話しかけた。
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