第18章―虚ろな心―5
蒼い月が暗闇の空に不気味に浮かんでいた。静寂に包まれた中で、2人は同じベッドの中で横になって月を眺めた。リーナは一時の快楽に身を委ねると、その後から続く高揚感に浸っていた。求めあうことを止めると彼女は隣で横になっている彼の広い胸に頭を寄せて抱きついた。
「綺麗な月ね。ここでは余り、月が見れないから不思議だわ。ねえ……?」
彼女は黙っている彼に話しかけた。
「ああ、そうだな…――。それより大丈夫か?」
「えぇ、私は大丈夫。あんなに激しく抱いてくれるとは思わなかったわ。まだ、あたしの中に貴方がいるみたい……」
リーナはそう話すと、彼の顔を覗き込んだ。
「私はずっと自分の身体を売って生きてきたから男性に酷い事されても、激しく抱かれても平気なの……。でも、貴方だけは他の男性とは違うわ。だって私の事を抱いた後も身体を気遣ってくれるもの。貴方は優しいわ。他の男性は私の事を好きなだけオモチャにした後は優しくしてくれないもの…――」
「リーナ、俺はアンタが思ってるよりも……」
「黙って…――」
彼女は言いかけた彼の言葉をキスで塞いだ。柔らかい唇の感触に、ハルバートは目を閉じた。
「言わなくてもいい。あたしの勘違いでいさせて……。あたしはここでは、男性を慰めるだけの奴隷でしかないけど、貴方だけにしか抱かれたくないの…――。他はどうでもいい。貴方が好きよハルバート……。でも、罪人の女にこんな事を言われても、嬉しくないかもね?」
「リーナ…――」
「貴方だけのオモチャになってもいい。それは本当よ……」
「それでアンタは幸せなのか……?」
「わからない。でも貴方とこうしている時だけが、私は幸せなの…――」
彼女はそう話すと、彼の身体に身を寄せた。
「ねえ、さっき魘されていたけど。どんな夢をみていたの?」
「ああ、ちょっとな…――」
ハルバートはそう答えると、ぼんやりと天井を見つめた。そして、何かを思い出すようにポツリと話した。
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