第9章―ダモクレスの岬―3
ギュータスは挑発的な笑いを浮かべながら言い返した。
「おっさんこそ、いずれ俺が後悔させてやる! そん時は泣き寝入りしても無駄だ!」
2人はそこで敵意を剥き出すと激しく敵対心を燃やした。リーゼルバーグは、2人の前で剣を抜くと怒鳴った。
「いい加減にしろ! でなければ私が力ずくでもお前達を止めてみせる! 我がバスティウスの剣の誇りにかけて!」
リーゼルバーグは剣を向けると、騎士の顔つきになりながら2人を威嚇した。ハルバートは舌打ちをすると、仕方なく引き下がった。
「ここは奴の顔に免じて引き下がってやる。だが、さっき言った言葉は忘れるな!」
彼はそう言い放つと自分の竜がいる場所へと戻って行った。リーゼルバーグは抜いた剣を腰に納めると、そこでため息をついた。
「ハルバート、ギュータスなんてワザワザ相手にしなくてもいいぜ。アイツは力しか取り柄がないバカなんだからさ。そんな事より早く探そうぜ?」
ケイバーは竜の上から彼に話しかけた。
「うるせーな、そんな事はわかってるんだよ。それよりあの野郎、やっぱりムカつくぜ! 一度しめとかないと俺の気がおさまらねぇ!」
「しめてもいいが、血の雨だけは降らすのはやめとけよ?」
彼はそう話すと笑いがなら上から見下ろした。
「で、次はどうやって見つける? この周辺を一斉に見て回るか?」
「ああ、そうするしかねぇな……。足跡はまだ新しいからきっとこの近くにいるはずだ。それに跡を辿れば必ず見つかるさ。この吹雪が足跡をかきけさなければの話だが…――」
ハルバートは険しい表情で不意にそう答えると辺りを黙って見渡した。吹雪が舞う中、空と陸の両面では部下達が辺りを見渡しながら捜索を続けていた。
「一層の事お前の竜に逃げた囚人の足跡のにおいを嗅がすのはどうだ? お前の竜なら一発で囚人の居場所を見つけられるだろ?」
「ふざけるな! 俺の竜はワンコじゃねーんだよ! 竜を犬と一緒にするな! こうみえても俺の竜はプライドが高いんだ! ふざけて舐めてるとヴァジュラに食い殺されるぞ!?」
彼に向かってそう言い返すと、ハルバートは竜の背中に乗ろうとした。するとユングが突然、大きな声をあげた。
「いっ、いました! あそこですハルバート隊長!」
ユングは慌てながら片手で指をさした。ハルバートは、咄嗟に指された方角に目を向けた。すると逃げた囚人が崖の方に逃げていく姿をとらえた。彼は颯爽と竜の背中に乗ると近くにいた部下達に命令した。
『逃がすな追え!』
彼のとっさの指示に部下達は一斉に囚人を追いかけ始めた。
「飛べ、ヴァジュラ!」
ハルバートは竜に命令をすると、急いで囚人のあとを追いかけに行った。囚人は雪に覆われた地面を懸命に走って逃げまどった。部下達は後方から竜に乗っての追跡だったので直ぐに捕まえられると確信していた。しかし、囚人との距離が縮まったその時、突風が突如吹き荒れて彼らの方へといきなり襲いかかった。
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