第7章―闇に蠢く者―11

「父上、私は貴方様が下界で人間達に囚われている間ずっと、そのことを考えていました――」


「息子よ……」


 カマエルは息子の心痛な思いに心をいためた。


「思い出すのは、いつもあの時のことです……。ミカエル様がモルグドアの門の扉の前で、忌まわしきサタンの手によってお倒れになったお姿が、どうしても目に焼きついて頭から忘れられないのです。偉大なるミカエル様は、私にとっても永遠のシンボルの存在。気高き強さを身に纏い。消して誰にも負けることのない彼の真の強さは、まさに英雄そのものお姿です。それがあのような者の、卑劣な罠によって倒れるとは信じられないのです。私は何故、あの時ミカエル様を…――!」


「息子よ、自分をせめるではない! いくら嘆いても、時に変わらないこともある。私かそうだった……! お前達を守れなかったのは私のせいだ! あの時、私が忌まわしき悪魔などに破れていなければ…――!」


 カマエルは囚われの牢獄の中で悔いて嘆いたのだった。彼は父の悲しみに共感すると黙って父を見つめた。


「カミーユ様。何故、私がそのような答えに到ったのは言うまでもありません。私はあの時のことをずっと、考えていました。そして、バラバラだったピースの欠片を全部あつめた時その答えにようやく辿り着いたのです…――!」


「息子よ、そうであったか……」


「はい。全ては、ハラリエル様の予言通りになられました。天界への暗雲の影。黒き門より参りし鋼の剣。純白の羽。そして、悪魔に囚われた赤の獅子王。そう全てはまさにコレを予言なされていたのです…――!」


 彼のその話にカマエルは動揺した。


「本当にハラリエル様はそのようなことをお前に告げたのか……!?」


「ハラリエル様は夢の中で見た予知をあの者に話したのです。神の秘密と呼ばれる天使に――」


 そう話すと、彼は瞳を怪しく光らせた。


「――神の秘密か。たしかにソヤツは天界ではそう呼ばれる事もあった。秘密の領域と至高の神秘の天使、ラジエルだな?」


「そうです父上、ラジエル様はハラリエル様の側近の部下です。ハラリエル様の予言なされた秘密は全て、あの者が守っております。そして、それは他言無用で決してだれにも話す事はない頑なな意思を持つ男です。ですがラジエル様は、私にその予言を話してくれました。彼はラグエルの監視を欺くのは要因ではないとおっしゃいましたが、ラジエル様はどうしてもそのことを私に伝えたかったそうです。そして、私はラジエル様だけではなく。ハラリエル様からも直接その予言の話を聞かされたのです。私はその予言を聞いたあと居ても立ってもいられなくなり、不本意ですがあのお方……。ドミニオン様に予言のことを話したのです。ですが、予言を変えることは出来ませんでした。私はそれが悔しくてたまらないのです…――!」

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