第7章―闇に蠢く者―10
『ウオォォォォッ! サタァァァァァアン!!』
カマエルは大きな雄叫びをあげながら、内から沸き上がる怒りを露にした。
「おのれぇ、忌まわしきサタンめ! よくもミカエル様を……! 我が主君に、手をかけるなどとは決して許さんぞ! 奴の心臓をえぐり出して、その息の根を止めてやるっ!」
カマエルの怒りと憎悪に満ちた声は、さすがに彼も怖じ気づいたのだった。深い絶望と怒りに満ちると、世を嘆くようにポツリと呟いた。
「ああ、もはや天界に光は去った。暗闇が訪れようとも、我らに未来などない…――!」
カマエルの絶望視したその言葉に彼は同じく共感した。
「確かに貴方様の言う通りです。ミカエル様なくして、天界に光など決して訪れません。ましてや、暗黒の影が我らの天界に訪れることでしょう。まさにその通りでございます……! ですが、希望はまだ絶たれていません。確かにミカエル様はあの時、命を失いました。ですが、ラファエル様の奇跡の力でミカエル様は命をとりとめたのです…――!」
「な、なんと…! それはまことか!?」
「はい! ラファエル様はミカエル様を助ける為に奇跡の力をお使いになったのです!」
彼のその言葉にカマエルは驚愕したのだった。
「おおっ、奇跡の力……! 遥か古に使われたていたとされる、神に選ばれた者のみが使うことを許された奇跡の神秘の魔法か……!?」
「カミーユ様、その通りです。ミカエル様は蘇生魔法により、辛うじて命を救われたのです」
カマエルは息子の言葉に安堵の表情を浮かべた。
「おお、なんと言う偉大なる奇跡だ…! ラファエル様は、まさしく癒しと慈愛に満ちた慈悲深きお方だ!」
カマエルはそう呟くと瞳にウッすらと涙を浮かべたのだった。
「ですが父上、ミカエル様は蘇生魔法で命をとりとめましたが、今も危険な状態が続いています……!」
「な、なにっ……!?」
「体の傷は癒えましたが、ミカエル様の魂は戻らなく。まったく意識がない状況が続いています。いつ目覚めるのかもわからずに、今も深い眠りに彼はいます。ラファエル様がおっしゃるには、このまま今の状態が続けば、何れはミカエル様の魂は体に戻ることもなく、魂は完全に消滅なさると言いました。それほどまでにも今も深刻な状況なのです…――!」
息子の話を聞いたカマエルは、ミカエルが深刻な状態にいる事を深く理解し、そこでうつ向いたのだった。
「ミカエル様は目覚めずに今も深い眠りの中をさ迷っています。ドミニオン様はミカエル様のその痛わしいお姿を天界の者には見せまいと、ウリエル様の宮殿にミカエル様をおかくしになられました。ミカエル様は我ら天界にとっては、永遠の盾と剣のシンボルです。天界が悪魔から守られていたのは偉大なるミカエル様がいたからこそです……! ですが、今はそのシンボルも足下から崩れ去ろうとしています。もし、彼のお姿を下級の天使達が見たりでもしたら。天使はさらに混乱に陥ると、ドミニオン様はおっしゃいました。ウリエル様もラファエル様もガブリエル様もハラリエル様もミカエル様のことを酷く心配して気にかけております。ですが、あのお方は…――!」
彼はそう話すと突然、暗い顔になって言葉を詰まらせた。
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