第5章―死と恐怖―6
「貴様はこの話どうおもう?」
クロビスが質問すると、ケイバーは首をかしげて答えた。
「さあな。でも嘘にしては、なんか迫真に迫るんだよなぁ。コイツが言うには、オーチスが逃げた囚人と度々、会話をしてたって所が気になる」
ケイバーがそう言うと彼はハッキリと、嘘じゃないと再び言い切った。オーチスは自分は無実だと訴える一方で、若い看守の男は彼が牢屋の中に居た囚人の男と2人で度々会話をしてる姿を何度か目撃したとクロビスに証言した。そして、彼が囚人の脱獄に『加担』しているとハッキリと断言した。
クロビスはそこで考えるとケイバーに尋ねた。
「もしもこの男の話が本当だったら、お前はどうする?」
彼が尋ねるとケイバーは自分の頭をかきながら答えた。
「そうだなぁ。俺だったら一応、『決定的証拠』を出して貰いたい所だな。それで嘘かホントかを見極めるけどな」
「ほぉ……」
「――ん? なんだよ、ってことは何かわかったのか? お前はどっちの話を信じてやるんだ?」
ケイバーがそう尋ねると、クロビスは鼻で笑い『フン』と答えた。
「バカを言え! 信じるも何も囚人が一名、脱走している事実には何も変わらんだろっ!? このどちらかに落としまえをつけて貰うだけだ!」
クロビスはそう言うと2人に警棒を向けて、冷酷な顔で話した。
「命を絶つのはお前かオーチス? それともお前かチェスター? 今から死刑宣告と言った所か、2人とも今のうちに逸書は考えとくんだな!」
その言葉に2人は震え上がった。オーチスは何故だと言わんばかりにその場で騒いで暴れた。若い看守の男。チェスターは、地面に手をついて絶望した顔のまま言葉を無くした。
チェスターは『嫌だ、死にたくない!』と彼の足下にしがみついて必死に訴えた。クロビスは、そんな若い看守の男の嘆きの姿を上から見下ろしながら冷酷に笑った。そして、みっともなく足下にしがみつく彼に話した。
「そうかそうか、死にたくないか? だったら、オーチスが囚人の脱獄に加担したと言う決定的証拠を出して貰うか?」
「しょ、証拠ですか…――?」
「お前はさっきから、オーチスが脱獄に加担していると何度も証言している。そして、それは事実だと私に言ったな。私が思うにお前の自信は一体どこからくるんだ? 何故オーチスが脱獄に加担しているとハッキリと言える。だったらその決定的証拠を私に見せてもらおうか?」
クロビスは言い放つとチェスターを上から見下ろしながら冷酷な顔を見せた。オーチスは椅子の上で言った。
「そ、そうだ! 証拠だ…――! 私が共犯者のようにお前は言っているが、もしそうだとしたら動かぬ証拠を見せて貰おうか!?」
オーチスは彼に言うと、加担した証拠を見せろと逆に詰め寄った。
「私は神に誓って無実だ! 脱獄した囚人の手助けなどするはずがないだろ!? 手助けして私に何の得がある! 私はこのタルタロスに、何年も勤めているんだぞっ!? 罪人が死のうが死なないが私には一切関係ない事だ! あいつら罪人は裁かれて当然なんだ!」
椅子の上で激怒しながら彼に言い放つと、息を切らせながら怒りに内震えた。そんなオーチスをケイバーは背後から『まあ、落ち着けよ』と軽く宥めた。
不穏な空気が漂う部屋の中はやがて殺気立ち、ピリピリとした空気が張り詰めた。オーチスは睨みながらチェスターに言うと、クロビスも同様にチェスターのことを煽った。そして、ケイバーも彼と一緒に煽ったのだった。ギュータスは自慢の斧を振りながらその場でやる気を見せた。
「さあ、やられるのはどいつだっ!? 早くこの斧に新鮮な血を吸わせろ!」
ギュータスはそう言うと殺気だった瞳で、自分の斧を持った。周りに一斉に問い詰められると、チェスターはムキになって反論した。
「しょっ、証拠ならある! 俺はあの日、2人の会話を聞いてたんだ! オーチスさんは、囚人と鉄格子の前で会話をすると何か書いてある『紙』を囚人に手渡したんだ!」
『何だとお前っ!!』
その言葉にオーチスは思わず驚いた声を上げた。
「俺はまさかと思った! まさかオーチスさんが囚人に脱獄の話を持ちかけてるなんて、信じられなかったんだ……!」
そう言って彼が青ざめさせながら反論すると、オーチスは激怒しながら言い返した。
「ふざけるな小僧、今すぐその舌を引っこ抜いてやる!!」
怒りながら騒ぐとクロビスはケイバーに『奴を黙らせろ』と指示を出した。彼は言われるままに警棒で頭をガンと殴った。
「うるさいんだよ、黙れ!」
頭をガンと叩かれると血が地面に流れ落ちた。クロビスは彼が黙って大人しくなるとチェスターに再び質問した。
「おい、囚人はその紙を受け取ったのか?」
彼の質問にチェスターは正直に頷いて答えた。
「はい……! 俺はこの目でオーチスさんが囚人に紙切れを渡す所をハッキリと見ました!」
チェスターがそう話すとオーチスは嘘だと強く否定した。
「嘘だデタラメだ! そんな事があってたまるか、私は無実だ!」
オーチスは自分は無実だと必死で訴えても、疑いの目は彼に向けられた。
「なるほど……囚人はそれを受け取ったのか? では、それは今何処にある?」
クロビスの質問に、チェスターは言葉を濁らせながら答えた。
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