第5章―死と恐怖―5
「ああ、わかった……!」
クロビスは跪くギュータスに向かって、上から見下しながら命令した。
「私の靴にキスをしろ!」
ギュータスは彼に言われるままに彼が履いている黒いブーツに忠誠の証しとしてキスをした。跪いて靴にキスをすると、クロビスは上から見下しながら鼻で笑った。
「フン、犬め……!」
彼はタルタロスで働く看守達に失望すると、そこで溜め息をついた。
「ええい、こうなったら私が所長に就任した時はタルタロスの掟を全てかえてやる! お前達がこんなに役立たずだったとは呆れてものも言えん! まずは手始めにバカな看守達には、囚人とむやみな会話は禁止と言う事を身体で覚えさせてやる!」
クロビスはそう言うと鬼畜な表情を浮かべながら怪しく笑った。そして彼は視線を若い看守の男に向けると、そのまま黙って彼の目の前に立った。自分を見てくる鋭い視線に彼は、その場で足元が震え上がった。クロビスは単刀直入で尋ねた。
「――いいか、私はな。こう見えて何でも『白黒』つけたい主義なんだ。わかるだろ? お前はハッキリする事としない事、どっちが好きだ?」
冷酷な表情で言い放つと、ただならぬ威圧感を放ちながら、靴を鳴らせてジリジリと近づいた。若い看守の男は目の前で威圧されると額から汗を滲ませた。
「おっ、俺もハッキリとした事の方が好きです……!」
彼は口元をガチガチと震わせながら答えた。クロビスは冷酷な表情で怪しく微笑むと男の顎を指先で上にクイッとあげた。
「フフフッ……お前もそうか?」
「はっ、はい……!」
「だったら今から私が聞く質問には、正直に答えるんだ! お前も奴みたいには、なりたくはないだろ!?」
クロビスの威圧的な言葉に彼は自分の顔を真っ青にさせながら、椅子に拘束されているオーチスを横目で見て頷いた。
「はい……!」
若い看守の男がそう答えると、クロビスは冷たい瞳をしながら話した。
「いい返事だ。お前はオーチスの会話を聞いたんだろ? だったらお前が知っている事を全て洗いざらい話せ!」
若い看守の男は、自分が知っていること全てを洗いざらい話した――。
「自分はオーチスさんが牢屋の中に居たあの若い男と会話している姿を数回ほど目撃しました! 一回二回だけじゃなく。何度か2人して、親密な会話をしていました……! あれはまるで自分達の会話を誰かに聞かれたら、マズイような感じの雰囲気でした!」
彼が正直に全部話すと、オーチスは拘束された椅子の上で怒りを込み上げながら反論した。
「ふざけるな小僧、よくもそんなデタラメが言えたものだな! 私はあの牢屋に居た囚人とは、今まで一度も会話すらしたこともないんだぞ!」
オーチスは怒りを露にしながらそう訴えた。ケイバーは暴れる彼に『まぁ、落ち着けよ』と言い、ノンキな顔をしながらその場を宥めた。
若い看守の男はオーチスの怒った様子に怯えると、クロビスはそんな事はお構い無しに『続けろ!』と男に命令した。彼は促されると再び話を続けた。
「オーチスさんがあの囚人の男と何を話しているのか気になったので、一度そのことを本人に直接聞いてみたらいきなり首を絞められて、聞いた事は全て忘れろと脅されました…――!」
若い看守の男がクロビスにその事を話すと、オーチスは激怒しながら反論した。
「何を言ってるんだお前は……!? ふざけるのもいい加減にしろっ!」
オーチスは今にも飛びかかりそうな勢いで、彼に向かって怒鳴り散らした。
「ハハッ、すげーな。脅迫に暴力、随分と立派な手口だな! やるなぁ、あんた!」
ケイバーは嫌味な表情でそう言うと、オーチスの肩を軽く叩いてそこで笑いを込み上げた。若い看守の男は次から次へとクロビスに話した。
「自分はあのあと、オーチスさんの行動に不審を抱き。何度か2人の会話を盗み聞きしました」
若い看守の男がそう言うと、クロビスは興味深い顔をしながら尋ねた。
「ほう、それは面白い……お前は一体、何をその耳で聞いんだ?」
「はい! 自分がそのときに聞いたのは『使い』『鉄格子』『脱獄』と言った会話の部分を聞きました!」
若い看守の男はクロビスにそう話すと、オーチスはその事を否定した。
「知らん、私はそんなことなど知らんぞ……! コイツは私のことを嵌めようとしているんだ! 私はそんな話をしたこともなければ、言ったことすらない! これは何かの間違えだ!」
彼はそう言い返すと酷く混乱した様子で椅子の上で暴れた。
「お、お願いしますクロビス様、どうか私を信じて下さい! 私は無実です! 無実なんです! どうか、どうか、私を……!」
オーチスは涙ながらにクロビスに訴えるが、若い看守の男は全て真実と言わんばかりに彼に言い返した。
「クロビス様、この男に騙されはいけません! この男の話は全て本当のことです! 彼は囚人に脱獄させる為の話をコソコソとしてたんです! 絶対に間違いありません!」
そう言ってオーチスに向けて指すと強く断言したのだった。若い看守の男がそう言って話すと、彼は考えながらケイバーに尋ねた。
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