第7話

 はあ、とロジトは溜息をつき、ふよふよ私の周りを漂いながら話し始めた。


「まず僕はロスタ教の神だ」

「ロスタ教の唯一神てことですね? 」

「そうそう。それで僕の姿は教主しか見れないんだ。もっというと力のある、ね」


 ちから?


「力って何を指すんです? 」

「うーん、それはわかんないかも。神力しんりょくとか、総合力かな」

「神力っていうのは」

「名の通り、神の力だね。基本的には僕だけ持っているんだけど、教主の人は例外的に持っていることが多いんだ。わかりやすく言うと光の通り道が見えるかどうか、かな」


 それを聞いてアミュローゼスは、幼い頃に見えたあれの事か、と納得した。


「なるほど」


 だから、見えたとわかって直ぐに教主だって言ったのか。ロジトの悲しそうな表情を思い出し、自身の記憶と重なる。


「……寂しかったでしょうね」


 ロジトはその言葉に驚き、目を見開く。

 誰にもわかってもらえない、それはアミュローゼスにとっても辛いことだった。


「そんなことを言う教主は今までではじめてだよ」


 ロジトはそう、少しだけ笑って言った。




 その後は丁度アニスが私を呼びに来たものだから、バレないよう浅い礼をしてロジトと別れた。


「本堂で何をしていらしたのですか? 」

「……特に何も」

「そうですか」

「うん」


 アニスはふと立ち止まって、振り返り、何か言いたげな表情をしたが、また向き直り、進み始めた。


「アニス」

「なんでもありません。気にしないでください」


 そう言われたら気になるのが人間の性。だけど、ここは聞かないでおこう。なんとなくそう思った。

 ダイニングに着くと、そこには、なっがぁいテーブルがあり、多分絹製の白い布がかけられていた。それは上品な光沢を放っていた。もう、流石としか言えないよね、うん。


「さっ、おかけ下さい。教主様」


 いつの間にやらいたヴィーゲンシュタットが椅子を引き、私を座らせる。


「今日のメニューはですね……」


 メニューを読み上げるヴィーゲンシュタット。その後すぐに料理が運ばれてくる。出来たての湯気が立ち上り、美味しそうないい匂いがしてくる。


「お食べ下さい」


 にっこりするヴィーゲンシュタット。でも、なんとなく一人では食べる気にならなかった。


「二人は食べないの? 」


 アニスもヴィーゲンシュタットも私を見る。


「私達、ですか? 」

「うん」

「私たちはアミュローゼス様の後に食べますよ」


 アニスが言う。


「でも、一緒に食べようよ」


 一人での食事は、もう勘弁だから。味気ないし。私の提案に、2人はどうしようかと目を見合せ、仕方ない、といった様子で各々隣に席着く。


「ありがとう」

「教主様の願いをできるだけ叶えるのが私たちの仕事でもありますから」


 やれやれと言うアニス。でも、少し嬉しそうに見えた。ヴィーゲンシュタットは最早尻尾を振っているように見える。


「冷めないうちに食べよう? 」


 私たちはナイフとフォークを持った。

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