第5話

「誰って、僕のことを言っているのか? 」


 謎の人? はそう問い返してきた。


「え? そうですけど」


 他に誰がいるのさ、むしろ聞きたい。


「お前、僕の声が聞こえるのか! 」


 喜びに満ちた声が響く。


「いや、姿も見えますけど」


 一応訂正しておくと、更に喜んだ謎の人?


「ということは、お前はロスタ教の教主だな!? それに、……」


 止まることのない口運動を無意味に見聞きすると、ふと引っかかる言葉が聞こえた。

 ロスタ教の教主ってなんでわかった? ますます分からないこの人? そもそも浮いているのだから、人かすらも分からない。


「あの、なんで私が教主だって分かったんです? あと後半何言ってました? 」


 まっじで聞こえなかった。多分書き言葉だったら、てんてんてん、になるやつ。


「あと、結局あなたは誰なんです? 」


 真剣な眼差しで私は目の前を捉えた。きょとんとする人? は「ああ! 」と言って己を話し始めた。


「僕はロジト。神だ。敬うが良い」

「はぇ」


 右手を胸に当てて、自信満々に答える。対して私は素っ頓狂な声が出た。

 いやだって、ねぇ? 神とか言い始めたよこれ。んでも、浮いているってことは、人ならざるものか。そしたら「神」っていうのもスジが通る気がしないでもない。えこれどうなの。

 私の疑っている視線に気がついたのか、ロジトは腰に手を当て、頬をふくらませた。


「まさかお前、僕を疑っているのか? 」

「それはそうでしょう。名前は分かりました、ロジトですね? でも神っていうのは信じ難いです」


 なおも変わらない私の態度にロジトは唖然とした。


「……お前それでもロスタ教の教主か? 」

「いやだってそれは、」


 ぎぃぃ……、ばたん! とそこに扉が開いた。ええ、誰?


「失礼します、アミュローゼス様」


 凛とした声が響く。そこに居たのは、先程からいた二人組だった。


「あ、どうも」


 なんとなく、ぺこりとする。いやでも今はロジトと話してるから、ちょっと出てって欲しいかも。ていうかロジト浮いてるから見たら変って思うんじゃないの?


「自己紹介が遅れました。私は第一補佐官のアニス。そして、護衛騎士がヴィーゲンシュタットです」

「誠心誠意お守り致します」


 ヴィーゲンシュタットがぴしっと礼をする。


「よろしくお願いします」


 それに吊られるように、私も一礼。

 アニスとヴィーゲンシュタットか。おけおけ、それは分かった。


「来てもらって悪いんですけど」

「所でアミュローゼス様は何故でお喋りになっているのです? 」


 ……え?

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