第3話 てことがあってだな?
「──ってことがあってだな?」
学校近くのファストフード店の一角で、ここ二週間ぐらいであった出来事を話終えると、僕の数少ない友人二人は口を揃えて言った。
「「で?」」
「え、いや、それだけだけど?」
「「は?」」
「てか仲良いっすね二人とも」
「「全っ然!! ……っぐぬぬ!!」」
いやーさすが、学年一のケンカップルは違ぇや。もうさっさと付き合っちゃえばいいのに。
「……と、まぁこいつの事はいいのよ。わざわざアンタが私達に自分のこと話すなんて、なんかしら困ったことがあるんでしょ?」
いやー、さすが幼馴染み様はよくわかっていらっしゃる。そんなこと言ったら調子乗って失敗するから言わないけども。
こんなクールで頭良さそうな名前してて、さらに濡れ羽色のストレートのロングヘアと同色の強気そうな瞳、とクールキャラとしての容姿まで手にしているのに、残念ながら馬鹿なんです。
どれぐらい馬鹿かと言うと、勉強を教えに来た友達が泣くぐらい馬鹿。そのせいで僕は一生こいつの勉強を見なきゃいけなくなって、学力が上がりました。多分こんな理由で頭いいやつほとんどいないよ。
……とまぁ、こんな事をだらだら考えてる間も時間は経っているわけで、目の前に座っている彼方はもう待ちきれなくて、はよ答えろオーラがすごいんですよね。
「ちょっと! なんか言いなさいよ!」
「んー? まぁまぁそう急かさないでよ。ねぇ翔太郎」
「うぇ!? 俺!?」
「翔太郎? アンタはどっちの味方なのよ!」
まぁ馬鹿だからこういう擦り付けも簡単なんだけども。
え? 擦り付けられた方が可哀想? 気にすんな。翔太郎は中学の頃からこのポジションだから。属性てんこ盛りすぎるから仕方ない。
丁度僕より二十センチぐらい身長が低くて、困った事があると僕に国民的に有名なアニメのおバカな丸メガネ君ばりの勢いで抱き着いてくる金髪碧眼の美少女。もとい美少年。
いやほんとに、言動は完全に男だし恋愛対象も女なのに、メイクは完璧だしボブカットの髪の手入れは美容師さんに褒められるレベルだし、そもそも服装は制服から女子のだし。
もう既に勘違いして告白してきた後輩を二十人以上振ったらしい。可哀想に。それでも構わんと言う変態さん達はそういうお店に流しているそうです。怖いね、翔太郎くん。
ちなみに、翔太郎は彼方と真逆で勉強はできるが運動はできない。なので、よく彼方にプロレス技をかけられる。
「いだだだだだだだだだ!!」
今みたいに。
「ぼーっとしてないで助けてくれよ!?」
「えー?」
「えー、じゃないわ! このドヤ顔馬鹿女どうにかしろ!!」
うわ、ほんとだ、すげぇドヤ顔で関節極めてる! 多分、これなんで技かけてるのかも忘れてる顔だ!!
ちょっと名残惜しいけどいつでも見られるといえば見られるし、翔太郎の骨がイカレかねないからね。止めましょう。
「はいはい、じゃあ魔法の言葉。『二人とも、周り見てみな?』」
「「え? ……あっ」」
机に押し付けられた翔太郎と、それの上でドヤる彼方。
周りには、ドン引きする人、注意しにこちらに寄ってくる店員、面白がって写真を撮る人などなどetc……。
割としっかり人だかりになっております、と。
「はい、二人とも何か言うことは?」
「「お、お騒がせしました……」」
ペコペコと周りに頭を下げながら着席すると、周りにいた人達は散っていく。たまに「なんであんなやつが美少女二人も侍らせてんだよ」みたいなこと言ってく人もいたけど、一人は馬鹿の中の馬鹿で一人は男の娘だけどいいのだろうか。僕だったら嫌だけど。
まぁ周りから見たら超絶美少女二人と目付きの悪い中背中肉、猫背の頭ボサボサ陰キャ君だからね。
くそー、僕がもうちょっとイケメンだったら良かったのになー。なんてラブコメ主人公みたいな願いなんてこれっぽっちもないけど。
……うし、そろそろ本題に入りますか。こいつらには誤魔化しは効かないですし?
「彼方、翔太郎」
「ん」
「なんだよ」
ほんと、二人に何度助けて貰うんでしょうね。
「僕に、もう一回小説を書かせて欲しい」
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