(三)

 土曜日の朝、美代たちは、弟の海生うみおの車で自宅から森丘へ向けて出発した。

 ワンボックスカーの車内には運転手の海生と助手席に美代が座り、後部座席には母・喜美子と祖父・あきら、祖母のいくの五人が乗っていた。小松家のほぼ総出での外出だった。

 車は磐手大学の近くの民家に入った。ごく一般的な庭付き一戸建ての建物だった。

 忠徳の家は、磐手県内で居酒屋やレストランを展開する「餐飲さんいんフーズ」という会社を経営していた。だからそれなりに金持ちのはずなので、もっと広いお屋敷みたいな家に住んでいるのかと美代は勝手に想像していたが、予想と違ってもっと庶民的であった。


(続く)

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