(二)-19

 漁協の休憩所の席に座り、美代はしばらく泣いていた。

 夕方頃、休憩所に誰かが入ってきた。そして私の目の前にペットボトルを置いてテーブルの反対側に座った。

「連絡きたよ。無事だってよ」

 うつむいていた美代は、顔を上げた。南条だった。

「どういうこと」

「エンジントラブルで漂流していたらしいんだが、沖合にいて、無線が届かなかったらしい。いま海保の巡視船に曳航されて蜂戸港に向かっているってさ。修理するからしばらくドッグ入りするそうだ」

「じゃあ、カケル兄は?」

「ああ、乗組員は全員無事だそうだ。良かったな」

 美代は、涙を拭いてから「そうね……。本当に良かった」と小さく言った。

「送っていくベ」

 南条は立ち上がった。

「うん、ありがとう」

 美代は小声でお礼を言って、立ち上がった。


(続く)

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