第23話 幼女とパパ
「……会いたかったよ………パパ」
赤黒い霧とともに現れた幼き姿の少女。
暗闇の中で一際目を引く白い肌。
その白さは人間のものではなく、まるで純白の雪のようだ。
髪は綺麗な桃色で、光に反射する度にその一本一本が光り輝く。
「サラ……ドラキュネル……」
サラ・ドラキュネル。
「ロード&マスター」の魔王軍幹部の一柱。
ドラキュラをモチーフにしたキャラクターだ。
……ザックもそうだが、俺の設定したキャラクター像よりさらに忠実に再現されている。
髪の色、肌のきめ細やかさ、胸の小ささから、腰つき……ん?
「っておいっ!!!服着ろよっ!」
「えぇ……これが楽なんだよねぇ……ん、パパの命令ならしょうがないね」
サラがそう言うと、体の周りから赤黒い霧が出現する。
それが螺旋状にサラを包み込み、あっという間に黒地の可愛らしいワンピースを身に付けた。
「これでいい?パパ」
「お、おう。でも、そのパパってのは何だ?」
「パパはパパでしょ!私たちを創ってくれたパパ」
「そ、そうか……」
そういえば…あの3人に見られたかもな…。
どうやって説明したらいいんだろう…。
ザックの方に振り向く。
………ん?
なんかでっかい盾で塞がれてるんだけど……。
まさか…ザックが見えないようにしてくれた?
さすがザックだ。
「………グッジョブ」
「ぐっじょぶ…?」
「ん?あぁ、いい仕事をしたって意味だよ」
「サラもいい仕事したいっ!パパの役に立ちたい!」
「あぁ、これからよろしくな」
「んっ!」
自然とサラの頭を撫でる。
俺が創ったキャラとはいえ、これが初対面だ。
なぜこうも撫でやすいのだろうか。
誰だ…サラをこんな撫でやすい身長にしたのは…
…うん。俺だよ…。
「サラ、一旦控えてもらっていいか?」
「…控える?」
「んー、この場所から一回いなくなることはできる?」
「うんっ!できるよ!」
「後で呼ぶからその時にまた来てね」
「わかった!またね〜パパ」
サラはそう言い残して、赤黒い霧となって消えていった。
それに合わせてザックが盾を聖剣の形に戻す。
俺は何事もなかったかのように、目の前に落ちていた魔核を拾った。
「お、おい、なんで塞いだんだよ」
「……」
3人は疑問に思いながらも、命拾いしたことに胸を撫で下ろしていた。
ザックは俺へと歩み寄り、膝をつく。
「2体目の召喚、おめでとうございます」
「…ありがとう。あの3人に見られないようにしてくれて助かった」
「私のすべきことをしたまでです」
「じゃあ今日はこのあたりで切り上げるか。サラのステータスとかスキルも確認したいし」
「かしこまりました」
◆ ◆ ◆
「なんだとっ!?!?」
SAIBAグループの本社。副会長室。
そこには、先日ダンジョンの50階層を突破するように命令された探索者が3名。
3人は一列に並び、副会長である
「も、申し訳ありませんでした!」
「ボス部屋をクリアできなかった上に、他のギルドに助けられただ!?」
「大変申し訳ありませんっ!!!!!」
「………もう良い、お前らはクビだ。最後に教えろ、どこのギルドだ?」
「……すみません。わかりませんでした……」
「はっ!?」
「30代近い冴えない男性と、20代の若い騎士の格好をした男でした…」
「あと、騎士の格好をした男はもう片方の男を「
「それだけか?……役立たずどもが。お前らは永遠の
『永遠の
この日本国において最強のギルドだと才波炎は確信している。
日本で唯一の1級探索者に、日本でも優秀な2級探索者を集めた組織。
そのトップギルドが他ギルドに助けられたことは、炎にとってかなりの屈辱であった。
「……おい、ちょっと待て」
出て行く3人を呼び止める炎。
「その騎士の男、金髪だったか?」
その言葉に図星をつかれたかのように顔を見合わせる3人。
「そうです…なぜそれを……?」
それを聞いた瞬間、炎は確信した。
ギルドという概念ができる前、亜門宗次郎が精鋭チームに入れたいと言っていた男。
一度その男と会ったことのある
だが、あの『鑑定』というスキルを持つ亜門宗次郎が言うのなら間違いないと思った炎。
その後、独自の情報網を元に調査を行った。
その結果、かろうじて得られた情報は九条カイトという名前の男。
元ゲーム会社で働いていたゲームクリエイターで、現在はランク5、つまり最底辺の探索者ということだけ。
ただ、気掛かりだったのは九条の周りで時々目撃されるという白銀の鎧を着た騎士。
探索者協会では、大学生と4人パーティーとして登録してあるのに、なぜ騎士ともパーティーを組んで登録をしているのか。
炎はそれ以上踏み込もうとしたが、どうやら協会のトップからの圧力によって情報が操作されていることがわかった。
炎の中ではすでに確信していた。
その金髪の騎士が亜門の言っていた「ダンジョン攻略の鍵を握る者」だと。
「ますます不愉快だが……会ってみたくなった……」
そう言って、スマホを手に取る炎。
「俺だ……少し調べてほしいことがある」
◆ ◆ ◆
神楽坂第一ホテル。
「ザック、サラ」
神々しい光。
赤黒い霧。
それが同時に出現し、その奥から人影が2つ。
その2人が同時に膝をつく。
この感覚…なかなか慣れないな……。
「サラ、改めてよろしく」
「よろしくっ、パパ」
「……パ、パパだと!? サラ様、なんと無礼なっ!」
「うっ…ザックちゃんあんま近づかないで……臭い」
「なっ………」
あぁ…そういえばそうだった。
サラはザックが苦手なんだった。
人として苦手とかではなく、ただ単にサラがヴァンパイアであることが原因だ。
ヴァンパイアは「聖」に関するものを苦手とする傾向がある。
また、サラのような亜人には女神の加護を受けている人が臭く感じる。
人間の守り神である女神が放つ独特な匂いがあるのだ。
「まあ、なんだ…あまり気にするな、ザック」
「……はい」
臭いと言われてザックが落ち込んでいる。
サラは何でもかんでも思ったことを言ってしまう設定にしたんだった…。
「サラ、とりあえずステータスを見せてくれない?」
「あ、はぁーい!」
——————
【名前】サラ・ドラキュネル
【称号】夜ノ王
【レベル】 100/100
【H P】 85000/85000
【M P】 48000/48000
【攻撃力】 52000
【防御力】 48000
【スキル】
『吸血』『血液操作』『高速再生』『眷属化』『霧化』
——————
うん。想像はしてたけど、これはあまりにも異常だな……。
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