第19話 協会とギルド
「「「…………え?」」」
先ほどまで目の前にいたオークジェネラルは、魔核となって消えた。
それは一瞬の出来事で、3人には何が起こったのか理解できなかった。
「ねぇ...いま…何が起こった?」
「いや、見えなかった…てかあれ、本当におっさんか?」
「……すごい……」
「おいお前ら、化け物を見るような目で人を見るなっ!」
「だ、だって!おっさんに戦闘スキルはないだろ!?」
「ん?あぁ。なんていうか…まあ、お前らには言ってもいいか」
俺はザックのスキルを一つだけコピーできることを伝えた。
3人とも俺のスキルが召喚系とは知っているが、召喚したキャラのスキルをコピーできることは知らない。
伝えた矢先、やはりナオが色々言ってくる。
「はぁぁぁああ!?なぁにそれ!おっさんだけずるいっ!!!!」
「…呆れたわ…何ですかそのチートスキル…」
「……いいな……」
驚きよりかは、3人とも嫉妬心に燃えているように見えた…。
「ちなみにおっさんがたどり着いた最高階って何階…?」
「あぁ……俺の力だけだと確か、50階だったな」
「「「………はぁぁあああ!?」」」
◆ ◆ ◆
「あなたたちが目指すのは50階層の突破だっ!!」
大声で探索者に語りかけているのは2級探索者、
普段はアイドルとして活動しており、お淑やかそうに見える反面、探索者としての彼女は違う。
まるで真逆の性格となる。
50階層は今までの階層とは違う点が一つだけある。
それは、ボス部屋にいるモンスターの種類。
今までの階層は、動物型のモンスターがほとんどだったが、50階層のボスモンスターは人型だという。
その強さも今までのボスとは比べ物にならない。
「ちなみに炎さんはすでにお一人で50階層を突破して、70階層を探索している!」
「「「おぉぉぉ」」」
「お前ら、精鋭チームに入ったのならその力を見せてみろっ!それができないならやめちまえっ!」
「「「はいっ!!!」」」
その横でネクタイを緩める
(全く…こんなクズどもがいなくても俺なら……)
「どうだね、炎くん。彼らは君から見て使えそうか?」
「会長…そうだな。使えそうなのは、
「やはり君の目は鋭い。私もその4人だと思っている」
「じゃあ他の2級は使えないと判断したら切り捨ててもいいか?」
「もちろんだ…お前の好きにしたまえ。私はただダンジョンを攻略さえしてくれれば構わない」
「……わかった」
才波は不気味な笑みを浮かべるのだった……。
———翌日。
「緊急速報です!日本で唯一の1級探索者、才波炎が記者会見を開きました」
会場は騒然としていた。
世界的企業SAIBAの御曹司兼、日本で唯一の1級探索者。
世界にも15名しか存在しないという1級探索者。
その影響力は計り知れない。
それが記者会見を開くというのだ。
日本各国の報道陣さらには海外からも記者が多く押し寄せていた。
「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます。今日は私たちが住むこの日本国にとって大切な話をするために呼びました」
会見の様子は全国に中継されていた。
「日本探索者協会は、先日東京ダンジョンの攻略を目標に精鋭チームを28名編制しました」
「「「おおぉぉ」」」
「しかし、私の独断で28人中24人をチームから外しました。これは、東京ダンジョンを攻略する上でしなければいけない判断でした」
会場の後ろで話を聞いていた亜門宗次郎は身を乗り出す。
(あやつ……一体何を考えてやがる……)
「今回私のチームとなった4人を紹介しようと思う。心海新太、斉藤力人、八重美紀、西園寺鏡花!!!」
才波が紹介していくと、会場に一人一人入って来る。
記者たちはフラッシュの嵐を彼ら、彼女らに浴びせる。
「そして、今日、この場で発表しようと思う。私たちは今日をもって———
———探索者協会の勢力から外れ、個別のギルド『
騒然となる会場。
大量に降り注ぐフラッシュの嵐。
その先では、才波炎が笑みを浮かべながら亜門を見ていた。
その中継は世界各国に放送された。
◆ ◆ ◆
会見から、1ヶ月。
あの会見は、世界各国の探索者に多大なる影響を与えた。
そして世界には、2種類の探索者組織が存在することとなった。
まずは今まで通り国、つまり協会に所属する「探索者協会」。
そして新たな組織形態。国に属さない個別の組織として「探索者ギルド」が誕生した。
探索者協会と探索者ギルド。
その違いは、一言で言えば「働き方」。
探索者協会では、自分でパーティーを組み、自分でダンジョンに行きたい時に行く。
だが、魔核から得られる報酬は実力に応じたものとなる。
そこには食っていける保証が存在しないということだ。
だが、新たにできた探索者ギルドは違う。これはいわば一つの会社だ。
雇用が発生し、もちろん給料も発生する。働き方によってはボーナスも得られる。
会社に入れば安定した給料をもらうことができる。
それがギルドという組織の待遇だ。
そこで才波炎は、才能のある者を集めようとした。
例え自分に才能があったとして、協会に所属するべきか、ギルドに所属するべきか。
そんなの決まっている。
安定した給料がもらえて、ボーナスも発生する。
安心して成長できる環境が提供されるのだ。
個別のギルドに所属した方が良いに決まっている。
「亜門君!君はどう責任を取るというのかね?」
改めて会見の様子を見ながら総理の額に青筋が浮かぶ。
それもそのはず。
国に属していたはずの優秀な探索者たちが、一瞬にして個別の組織となったのだ。
自由自在に操れたはずの力を国はなくした。
「たった1ヶ月の間で日本に18のギルドが生まれ、世界各国ではすでに58ものギルドが生まれました……。もうこの勢いを止めることはできないかと……」
国に属する探索者協会。
個人や企業に属する探索者ギルド。
協会はギルドの力がなければダンジョン攻略ができない。
ギルドは国(協会)の許可がなければダンジョンに入れない。
そこには、持ちつ持たれつの関係が生まれたのだった。
そんな中、モナコの崩壊が刻一刻と近づいていた…。
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